『エトセトラ』の責任編集も務めた山内さんが言う。
「以前は『TVタックル』の印象からネガティブなイメージがありましたが、実際に著書を読んでみて、感銘を受けました。田嶋先生はご自分の体験や研究で得たものを女性たちと共有して、みんなにも楽になってもらいたいという情熱を抱いていた。その思いからテレビの仕事も引き受け、苦しみながらも出演されていた。長い間、誤解していたことを反省しました」
女性や社会問題を研究する富山大学非常勤講師の斉藤正美さんは、「いまの田嶋さんには世代を超えたファンがいる」と語る。
「昔から田嶋さんを見てきた60代以上のファンは、彼女の考え方や強い主張に共感して、“よくぞ言ってくれた”とスカッとする。結婚して家庭に入ることを強いられた世代ですから、同世代の田嶋さんがきれいなドレスとつけまつげをまとってシャンソンを歌い、人生を謳歌する姿にも元気をもらっています。
一方で山内マリコさんのような30~40代の女性は、社会に出て理不尽な経験をしてから田嶋さんを“再発見”する。当時はビートたけしさんや舛添要一さんとのバトルを笑って見ていたのが、改めて田嶋さんの思想に触れて、“こんなことを考えている人がいたんだ”とファンになるケースが多い」
しかし田嶋さんが初めてメディアに登場してから、すでに30年が経とうとしている。なぜいま、ここに来て彼女はブレークしているのか。
「田嶋さんは『早すぎた人』だったんです」
そう指摘するのは、作家で生活史研究家の阿古真理さんだ。
「田嶋さんが1990年代に『セクハラは犯罪だ』『女は男の奴隷じゃない』と主張していた頃はまだ人々の意識が低く、『それ、言いすぎじゃないの』『セクハラを受け流せてこそ、いい女なんじゃないの』と受け止められました。ところがここ数年で『#MeToo』や『#KuToo』などのフェミニズム・ムーブメントが活性化して、時代が田嶋さんの主張に追いついた。彼女が非常にわかりやすい言葉で解説していることも、一般の人の心に届く理由でしょう」
※女性セブン2020年4月16日号