◆中性脂肪
このように、項目の中には基準値を超えたからといって本当に治療が必要なのか疑問符がつくものもあるようだ。それに加え、前日の食事などによって結果に大きな変動が見られる検査項目もある。東海大学医学部名誉教授の大櫛陽一さんが言う。
「中性脂肪の基準値は30~149mg/dlですが、遺伝子異常による脂質異常がない限り、超えても気にする必要はありません。欧米では遺伝子異常がなければ1000まで治療の必要はないとされています。そして、前日に口にした飲食物にも左右されやすい。
私自身の経験ですが、健診前日に会合でビールを多めに飲んでしまったところ、ふだん100程度だった中性脂肪の値が700まで上昇したことがあります。でも、すぐに下がりましたよ。また、朝に測ると高いが昼は下がるなど、健診を受けた時間によって100くらいはすぐ変動するものなのです」
赤坂山王クリニック院長の梅田悦生さんも言い添える。
「中性脂肪は食後に上昇しますが、高脂肪のものを食べると戻るのに14時間ほどかかることもある。
このように、ちょっとした生活習慣で大きく変わる数値はいくつかある。例えばホルモン検査のうち、副腎皮質ホルモンのACTHやコルチゾールは朝に高く、夜に低くなる傾向があります。逆に、甲状腺ホルモンのTSHは深夜に高く、午前中は低くなります。加えて、肝機能の数値は激しい運動をするとその1~2日後でも高値になるとされています」
つまり、健康診断の結果は、目まぐるしく変わる体の状態の、ごく一瞬を切り取ったものだということだ。大きく変動するものについては、深刻に考えない方がいい。
また、特に企業が行う定期健診は「異常値の人が多く出て、一斉に休まれては困る」という理由で、「要精密検査」の割合を全体の1%以内にする、などの取り決めがあったり、数値をどう評価するかについては医療機関や検査機関によって大きな差があるともいわれている。
「検査を依頼する機関によって機器や計上方法などが違うため、数値そのものは変わらなくとも、どこまでを要再検査にするかなどの取り扱いが違ってくる項目もある」(梅田さん)
※女性セブン2020年4月16日号