◆「男性を通じてしか社会とつながれない女性」とは誰なのか
『Followers』が人気を博しているのは、今を生きる女性たちへのメッセージに溢れたドラマでもある点だ。共感する言葉も多い中で、仁科さんが突っ込みたくなったのは、「男性を通じてしか社会とつながれない女性にならないでください」という言葉だ。
「具体的に誰のことを指しているか、ドラマの中で言及されないので想像すると、たとえば専業主婦だとしますよね。でも、専業主婦が社会とつながっていないわけでは決してないと思うんです。子育てや介護をしている人は世の中の動きに無頓着ではいられません。子供のいない専業主婦にしても、生活を営んでいるわけですから、社会と接点がないとは言えないでしょう。証券会社主催の投資セミナーには、既婚未婚、仕事の有無にかかわらず、老後に備えて投資の勉強をしたいという女性が増え続けているそうです。投資をするには社会の動きをよく知らないといけません。男性を通じてしか社会とつながれない女性、という表現には、やはり違和感があります。
そう考えていくと、リミの言う社会とは経済活動を前提とした社会であり、つまり経済活動をしていない人を認めてない、『稼いでナンボ』のように感じられます。このドラマは女性が働くこと、稼ぐことに大きな価値を置いていますが、収入の低い男性、専業主夫希望の男性は出てきません。でも、男女ともに働くことも、働かないことも認めるほうが、今の時代には合っている気がします。
ラストに出てくる『汝(なんじ)の道を進め、そして人々をして語るにまかせよ』は、このドラマの核となるメッセージです。これは多様性の時代にふさわしいメッセージですが、そのわりに、このドラマ自体がある層の女性に対して否定的なメッセージになっています。これもまた突っ込みポイントだと思いました」