◆子供を産むこと=「女性の幸せ」とくくる昭和感
突っ込みポイントとして仁科さんが挙げた一つが、リミの考える「女性としての幸せ」だ。写真家として輝かしいキャリアを重ねてきたリミは、38歳で子供を産みたいと望み、一人で育てる覚悟で妊活を始める。
「今の時代、結婚せずに出産したいという選択を否定する人はほとんどいないと思います。ただ、リミは、『仕事も、女性としての幸せも諦めない』と言っています。子供を産むという『個人』の選択を、なぜ『女性』の幸せとまとめてしまうのか。これでは、仕事なんてしてないで、結婚して子供を産むのが女の幸せだと言っていた昭和のおじさん、おばさんとあまり変わらないじゃないかなと。『私の幸せ』と言ってほしかったですね」
もう一つ、バリバリ働き、精神的にも経済的にも自立した女性たちが、出産や育児、あるいは家事を、女性の仕事だと思っているように感じられる点を指摘する。
「リミは、100%を仕事と子供で分け合うのではなく、分母を200%にして、仕事も子供も両方を100%にしたいと頑張ります。それは欲張りでもなんでもなく、当然の欲求でしょう。
でも、それを実現するには男性に変わってもらうしかないと私は思うんですが、リミは男性に何も望まないんです。結婚するかどうかは別として、妊娠は女性一人でできるものではなく、出産育児も然りです。それなのに、出産・育児を女性の問題と考えているように感じました。
それは、育児に他人の手を借りないところにも感じます。クローゼットにはハイブランドがずらりと並んでいるのに、なぜベビーシッターにお金を使わないのか。育児を母親の仕事だと思っているからではないでしょうか。これほど仕事ができる女性という設定だったら、最強の育児軍団を作るという合理的な判断があってもよかったと思います」