姿勢が悪い状態を長く続けるなどの原因で一度“浅い呼吸”が習慣になってしまうと、肺周辺の筋肉がどんどん使われなくなり、固まってしまうのだという。その悪循環から抜け出すために、肺の周りの筋肉を“鍛える”必要があると柿崎氏はいう。
「鍛えるといっても、肺の機能は強い負荷を与える類の“筋トレ”によって高めることはできません。使われていない状態の筋肉は、特定のエクササイズをして伸ばしたり刺激したりすると、また使えるようになります。そうすれば肺の機能はグンと上がるのです」(柿崎氏)
では、具体的にはどう肺を鍛えるのか。肺の機能を高める上で重要な役割を担うのが、「横隔膜」だ。
「横隔膜は呼吸筋の中で最も大きく、重要な筋肉です。肺と、胃や肝臓など腹部の内臓の境界にあるこの筋肉は、縮むことで肺を引っ張って広げ、同時に腸を押し下げる。それによって息を吸うことができます。一方、息を吐く際には、横隔膜が緩むことで肺がしぼみます。その際、腹筋や背筋などお腹周りの筋肉の働きによって腸などの内臓は体幹の中心へと収められ、横隔膜の位置は元に戻ります。
ところが、加齢とともにお腹周りの筋肉が衰えてくると、内臓の重さを支えられなくなってしまう。それに伴って横隔膜も元に戻らなくなってしまいます。そうなると息が吐ききれず“浅い呼吸”になるのです」(柿崎氏)
◆「正しい位置」に戻す
そうした問題を解消するためのトレーニングが別掲の図の体操【1】だ。仰向けに寝た状態で足を椅子に乗せ、背筋が真っ直ぐになるようにバスタオルを畳んで腰の下に敷く。
「腰を持ち上げた姿勢になることで内臓が頭側に持ち上がり、横隔膜が本来の位置に戻りやすくなります」(柿崎氏)
全力で呼吸するのではなく、「7~8割の感覚」でやるのがポイントだという。