ライフ

【大塚英志氏書評】南方熊楠の日本文学への言及を探る

『南方熊楠と日本文学』伊藤慎吾・著

【書評】『南方熊楠と日本文学』/伊藤慎吾・著/勉誠出版/7000円+税
【評者】大塚英志(まんが原作者)

 柳田國男にせよ折口信夫にせよ、この国の黎明期の民俗学者たちの活動領域は文学と重複する。柳田國男の学問は田山花袋らとの交流の中で強烈な近代的自我を持った青年がその対象を社会に向けることで立ち上がったもう一つの自然主義である。

 折口の「民俗学」と多くの人々が信じている論考は「国文学」として構築され、同時に彼は貴種流離譚を論じつつ自らにそれをなぞらえるファミリーロマンス的短歌を綴った。彼らの学問はかくも近代文学と不可分であった。だからその関心は自分自身が帰属する文学の起源に否応なくロマン主義的に向けられていった。

 しかしもう一人、南方と「文学」の問題は不問であった。粘菌などの自然科学的な知や博覧強記がパブリックイメージとして流布し、文学と結びつけられて論じられることは少なかった。本書で著者が問題とするのは南方の「日本文学」への言及の仕方だが、そこには「歴史的な側面がほとんど顧みられない」、「反歴史的叙述」と言っていいほどに「通時的視点」をとらない、と指摘する。つまり南方は文学の「起源」に思いを馳せないのである。

 従って国文学の資料を読む時でも、折口なら日本文学の系譜に縷縷位置付けていくのに対し、南方は「要素単位に分解」して通時性を奪い「比較」の資料とする。それは、柳田の民俗事象の変遷を追う手法に一見近い。古典的な地理学的方法を思い浮かべもする。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ブログ上の内容がたびたび炎上する黒沢が真意を語った
「月に50万円は簡単」発言で大炎上の黒沢年雄(81)、批判意見に大反論「時代のせいにしてる人は、何をやってもダメ!」「若いうちはパワーがあるんだから」当時の「ヤバすぎる働き方」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン
佐藤輝明
データで見る阪神・佐藤輝明の覚醒 「スライダーをホームランにする割合が急上昇」はスイングスピード向上の結果か 苦手な左投手、引っ張り一辺倒の悪癖も大きく改善
NEWSポストセブン
“トリプルボギー不倫”が報じられた栗永遼キャディーの妻・浅井咲希(時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫》女子プロ2人が被害妻から“敵前逃亡”、唯一出場した川崎春花が「逃げられなかったワケ」
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“1000人以上の男性と寝た”金髪美女インフルエンサー(26)が若い女性たちの憧れの的に…「私も同じことがしたい」チャレンジ企画の模倣に女性起業家が警鐘
NEWSポストセブン
24時間テレビで共演する浜辺美波と永瀬廉(公式サイトより)
《お泊り報道で話題》24時間テレビで共演永瀬廉との“距離感”に注目集まる…浜辺美波が放送前日に投稿していた“配慮の一文”
NEWSポストセブン
山田美保子さんが、STARTO社アイドルたちのバラエティーでの底力
《バラエティー番組で輝くSTARTO社のアイドルたち》菊池風磨、松田元太、猪狩蒼弥…グループ全体として最もスキルが高いのはSixTONESか 山田美保子氏が分析
女性セブン
芸歴43年で“サスペンスドラマの帝王”の異名を持つ船越英一郎
《ベビーカーを押す妻の姿を半歩後ろから見つめて…》第一子誕生の船越英一郎(65)、心をほぐした再婚相手(42)の“自由人なスタンス”「他人に対して要求することがない」
NEWSポストセブン
阪神の主砲・佐藤輝明はいかにして覚醒したのか
《ついに覚醒》阪神の主砲・佐藤輝明 4球団競合で指名権を引き当てた矢野燿大・元監督らが振り返る“無名の高校生からドラ1になるまで”
週刊ポスト
韓国整形での経験談を明かしたみみたん
《鼻の付け根が赤黒く膿んで》インフルエンサー・みみたん(24)、韓国で美容整形を受けて「傷跡がカパッカパッと開いていた…」感染症治療の“苦悩”を明かす
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《眞子さんが見せた“ママの顔”》お出かけスリーショットで夫・小室圭さんが着用したTシャツに込められた「我が子への想い」
NEWSポストセブン