国土が広いアメリカではテレワークが広く浸透している。営業マンはレップ(Rep/Manufacturer’s Representative)と呼ばれ、旅ガラスのように転々と移動しながら、いくつかのメーカーの製品やサービスを営業して回る。彼らは、車を運転して次の目的地に向かっている間にその日の成果を口頭で各社に報告し、それをメーカー側はアウトソーシングや音声変換装置などを活用して記録に残す。
日本の営業マンもそういう働き方ができるようになったら、物流拠点以外に支店や営業所は必要なくなり、そこにいる中間管理職も不要になる。担当者が交代する場合も、顧客データの引き継ぎが簡単にできる。
また、研修はすべて遠隔で可能になるから、通勤がなくなって余裕が出た時間を利用して新しいスキルを身につけるとよい。日本が遅れていた「リカレント教育」に取り組む千載一遇のチャンスである。
今回の新型コロナ禍を奇貨として、これらの技術や手法を立体的に組み合わせてテレワークによる真の「働き方改革」が拡大すれば、日本の労働生産性は飛躍的に向上するだろう。そうなれば「稼ぐ力」が一気に高まり、災い転じて福となすことができるのだ。
●おおまえ・けんいち/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『経済を読む力「2020年代」を生き抜く新常識』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。
※週刊ポスト2020年5月8・15日号