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「1985年とバースの幻想」に捉われ続けた阪神90年代の暗黒期

「来日以来4年連続3割を達成し、3年連続でリーグ最高出塁率を記録したオマリーのクビ切りには驚きました。“長打力不足”が理由に挙げられましたが、この年のチーム最多本塁打は石嶺和彦と新庄剛志の17本。オマリーは15本。ホームランはもう1人の助っ人に期待すればいいですし、広い甲子園ではそうそう打てない。阪神は、一体どんな外国人選手が来れば認めるのか。バースのような三冠王級の活躍をできる助っ人は、数十年に1人しか現れません。バースの残像を忘れられなかったのかもしれません」

◆オマリーを放出してグレンとクールボーを獲得

 翌年、ヤクルトと契約したオマリーは31本塁打を放ち、5年連続3割、4年連続最高出塁率を記録。チームを優勝に導き、セ・リーグのMVPに輝いた。オマリーを手放した阪神は開幕から低迷し、シーズン途中に中村監督が辞任。藤田平監督代行になっても浮上できず、リーグ最低の451得点に終わり、4年ぶりの最下位に転落した。

「オマリーの代わりに獲得したグレンが2割5分6厘、23本、77打点、クールボーが2割7分8厘、22本、77打点。及第点と言えるかもしれませんが、オマリーに比べれば物足りない数字でした。120試合に出場したグレンの成績を前半60試合、後半60試合に分けると、前半は2割9分3厘、16本、50打点でしたが、後半は2割1分9厘、7本、27打点と不振に陥った。それなのに、球団は残留を決めました」

 1996年、グレンは藤田監督とソリが合わず、クールボーも不調になり、シーズン途中に揃って解雇された。阪神は見せ場を作ることなく、2年連続の最下位に終わった。あと一歩で優勝まで迫った1992年の灯火は、トレードや外国人補強のチグハグさから、たった数年で完全に消えてしまった。

「1997年には“1985年の日本一監督”の吉田義男氏が再登板。ただ、中日からタイトルホルダー経験のあるパウエル、大豊を獲得したように10年以上経っても、1985年の“打ち勝つ野球”の幻想が消えていませんでした」

 吉田監督が5位、6位と低迷すると、1999年に他球団出身の野村克也監督が就任。左腕の井川慶や俊足の赤星憲広などを育て、2002年から星野仙一監督がバトンを受け継ぎ、翌年に18年ぶりの優勝を果たした。

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