ビジネス

コロナ恐慌で試される新社長の手腕 J.フロント、イオンほか

23年ぶりにトップ交代したイオンの吉田昭夫新社長(時事通信フォト)

23年ぶりにトップ交代したイオンの吉田昭夫新社長(時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの影響で企業活動の全面再開もままならない中、今年もトップが交代する企業は多い。果たして新しいリーダーたちはこの難局をどう乗り越えていくのか──。ジャーナリストの有森隆氏が、注目企業の新社長の横顔とともにレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの感染拡大は“令和恐慌”をもたらす。物価や株価の下落によって、中小企業の倒産や操業短縮が相次ぎ、失業者が街にあふれる事態も十分に考えられる。

 そんな大不況下でも、多くの企業で新社長たちが船出する。彼らに求められる資質とは何か。それは「有事」のリーダーになることだ。

「平時」のリーダーは規則をつくり、目標を与え、管理し組織に規律をもたらす人でなければならない。根回しや気配りに長けた調整型が重用される。現在の日本の大企業のトップの多くは平時のリーダーである。それぞれの企業の本流部門の出身で、中・長期の経営計画を立案する経営企画部長を務めることがトップへの登竜門となった。

 これに対して有事のリーダーは非常事態に対処するわけだから、修羅場に強いことが必要十分条件、最大の資質となる。

 5月現在、そしてこれからも修羅場は続く。食うか食われるか、決断の刻(とき)が、もうすぐそこにまで来ている。修羅場で鬼になれなければ有事のリーダーとして、成功はおぼつかない。

 果たして今年の新社長たちは有事のリーダー足りうるのか。

大丸心斎橋店本館のリニューアルオープンセレモニーに出席したJ.フロントリテイリング現社長の山本良一氏(右から3人目)と次期社長の好本達也氏(同4人目)=時事通信フォト

大丸心斎橋店本館のリニューアルオープンセレモニーに出席したJ.フロントリテイリング現社長の山本良一氏(右から3人目)と次期社長の好本達也氏(同4人目)=時事通信フォト

◆二人三脚で有事を乗り越えてきた

 百貨店は小売業の王者と呼ばれ、かつては無敵だった。だが、大型ショッピングセンターの出現やネットショッピングの台頭で、もはや絶対的な存在ではなくなった。これに新型コロナが追い討ちをかける。インバウンド(訪日観光客)需要が剥げ落ち、政府の緊急事態宣言による外出自粛で客足は遠のくばかりだ。

 未曽有の百貨店危機の最中、J.フロントリテイリングは7年ぶりに社長が交代する。5月28日付で山本良一社長が退任し、後任に取締役で、大丸松坂屋百貨店社長の好本達也氏が昇格する。

 同社の最初の「有事」リーダーは、前会長兼CEOで、相談役の奥田務氏である。

「老若新古に関わらず、信の心をたしなみ、才力をそなえたる人物を、ぬきんでて引き上げ、大役を申しつけるべきなり」

 大丸の創業家である下村家に伝わる、店主の心得である。人材を登用する際に最も大切にしなければならない要諦が記されている。

 バブル崩壊後の1990年代、大丸の業績はどん底だった。下村家12代当主、下村正太郎氏は1997年、末席常務の奥田氏に、大丸の再建の大仕事を託した。そして、社長に就いた奥田氏が営業改革の実行部隊長に指名したのが、梅田店の開設準備室で一緒に仕事をした山本良一氏だった。現在のJ.フロントの社長である。ここから奥田=山本の二人三脚の経営が始まる。

 2003年5月、奥田氏は山本氏を大丸社長に抜擢した。一介の部長が12人の役員を一気に飛び越えて老舗百貨店の社長になるサプライズ人事だった。山本氏は、これ以降、奥田氏が進める百貨店改革の陣頭指揮を執ることになる。時に山本氏、52歳であった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン