「日本も『命の選択のルール作り』が必要です」と指摘するのは作家の橘玲氏(61)だ。
「『譲カード』の問題提起は重要ですが、若者に譲るという選択肢を高齢者個人の犠牲的な精神に委ねると、『譲りたい人だけ勝手に譲ればいい』という人が必ず出てきます。だからこそ、医療崩壊を防ぐための公的なルール作りが必要です」
橘氏が例として挙げるのはオランダだ。
「オランダでは、集中治療室医組合が新型コロナにおける救命対象基準を80歳から『70歳』に引き下げ、アムステルダムの緩和ケア専門知識センターは『余命1年未満』や『重篤な心臓疾患がある』、『慢性的に体が弱い』などの患者をICUに運ばないとの基準を作りました。こうした公的な基準があれば医師が苦渋の決断をしなくて済むし、患者個々人の判断に委ねて“不平等”が生まれることもないのでは」(橘氏)
◆治る可能性が高いのに…
だが、当事者である高齢者にとっては「年齢で一律に区切られる」ことをすんなり受け入れられるわけではない。
「新型コロナは治る可能性が高い病気ですよね。この先はインフルエンザや風邪の一種のようになることを考えると、“若い人に譲ります”とは簡単に言えないな」
と語るのは落語家のヨネスケ氏(72)だ。