北朝鮮もコロナの脅威にさらされている(平安北道新義州市/朝鮮通信=時事通信フォト)
◆「政権は銃口から生まれる」
毛沢東は「政権は銃口から生まれる」と述べたが、北朝鮮軍(朝鮮人民軍)の特異なところは、毛沢東の言葉どおりに1948年9月9日の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)建国よりも前である同年2月8日に創設されていることである。
このような特異な軍隊である北朝鮮軍を、金ファミリーはいかなる方法で70年以上にもわたり忠誠を誓わせてきたのだろうか。
◆小規模クーデターは過去にあったが……
例えば、現在、北朝鮮でも蔓延していると思われる新型コロナウイルス。北朝鮮は感染者の数などを一切公表していないが、首都平壌以外の病院では、点滴用のバッグをビール瓶で代用し、メスの代わりにカミソリを使用するような深刻な医療水準にあることから、治療されないまま放置された多くの患者が死亡していることは想像に難くない。
このような医療水準になってしまったのは、正恩氏の祖父の代からの失政によるものだ。医療分野だけでなく様々な分野の政策が失敗し、常に非常事態にある北朝鮮で、ダメ押しのように発生したのが今回のコロナウイルスの蔓延である。
こうした国家レベルの危機は過去に何度もあったのだが、諸悪の根源である最高指導者を打倒するために、なぜ軍がクーデターを起こさないのかと思われるだろう。じつは、小規模なクーデターや暴動は何度か起きてはいるのだが、未遂に終わるか、迅速に鎮圧されている。
結論から言えば、北朝鮮軍ではクーデターは成功しない。と言うより、「起こせない」と言ったほうがより正確だろう。これは、旧ソ連軍が最後まで政治に介入しなかった(介入できなかった)ことと共通している。
このような北朝鮮軍が置かれている状況についての理解を深めるためにも、本稿では旧ソ連軍と政治の関係について触れることにしたい。北朝鮮軍は旧ソ連軍を真似て作られているからだ。