ビジネス

大規模リストラの日産が新フェアレディZの開発を続ける理由

オンライン会見で流された新型フェアレディZのシルエット(YouTubeより)

オンライン会見で流された新型フェアレディZのシルエット(YouTubeより)

 業績悪化に伴い、大規模なリストラ計画を打ち出している日産自動車。だが、これから発表する新モデルのクルマの中には、大衆車のようには利益が見込めないスポーツカー「フェアレディZ」の新型も含まれている。なぜ、日産はスポーツカー開発を続けるのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。

 * * *
 ビジネスを立て直すための構造改革費用を上乗せしたことで、2019年度決算で6700億円という巨額の純損益を計上した日産自動車。オンライン決算会見に続いて行われた事業構造改革の説明会で、内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)は「日産のポテンシャルはこんなものではない」と語り、2021年までにグローバル市場に12車種の新モデルを投入することを表明した。

 会見の最後に「NISSAN NEXT」と銘打ったショートムービーが流れた。そこに映し出されたのは新モデル12車種。低光量、逆光のため、ディテールまでは見えないが、シルエットは綺麗に浮かび上がっている。背景にはそれぞれの車名の頭文字が表示され、「アライヤ(EV)」「パトロール(ラージSUV)」「ノート(サブコンパクト)」「ローグ(コンパクトSUV)」等々であることがわかる。

 12車種のラストの文字は「Z」。ルーフの低い2ドアクーペのシルエットはまぎれもなく日産伝統のスポーツカー「フェアレディZ」だ。そして、他の車種の投影時間が個別にそれぞれ1.5秒くらいであるのに対し、Zは12車種が勢揃いするまで約10秒、見る人の目を占有し続けた。

 世界を震撼させている新型コロナの世界的流行による市場環境の激変で、自動車メーカー各社は戦略の大幅見直しを迫られている。その煽りを一番食っているのは、スポーツカーやスペシャリティカーなど“情感系”のモデル。作っても数も利益も出ないことから、延期であればまだマシなほう、多くはプロジェクトそのものが中止という憂き目に遭っている。

 そのような状況の中、1990年代後半以来の経営危機に見舞われている日産がフェアレディZのフルモデルチェンジをやめないことを意外と捉えたライバルメーカー関係者は少なくない。

「日産は前任の西川(廣人)社長時代『安物商売ではいずれ立ち行かなくなる』と、高付加価値分野にシフトする意向を明らかにしていましたが、それは良品廉価でやってきた日本のカーブランドにとっては茨の道で、よほどの意思がなければ必ず中途半端になる。実際には売り上げの立つモデルに集中せざるを得ないだろうと踏んでいました。

 その日産がおよそ利益を見込めないフェアレディZをやめないというのは本当に意外。引っ込みがつかないだけなのか、本気でブランド再構築をやり通そうとしているのか、今の時点では判断できませんが……」(国内自動車メーカー関係者)

関連記事

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン