そう話すのは、最近になって自主退学を決めた元防衛大生だ。同様の判断をする学生は多く、「すでに4月以降、30人以上もの自主退学者が出ていて、どんどん増えている」(防衛大関係者)というのである。将来の自衛隊を担う人材を育てていく組織にとって“戦線崩壊”ともいえる状況だ。
およそ2か月の間に、防衛大で何が起きていたのか。元学生が続ける。
「新型コロナの影響で4月5日に予定されていた入校式典は延期(5月になって中止を発表)になり、その直後の同7日に緊急事態宣言が発令されました。結果、教務(授業)や校友会(クラブ)活動の時間がすべて自習時間ということになった。
私たちの居室は、『寝室+自習室』がセットになっていて、自由に移動できるのは学生舎の中だけ。起床後は清掃と食事、自習時間の繰り返しで、夕方に入浴して夕食というサイクルをひたすら続ける日々となった」
この生活が、とくに防衛大に入ったばかりの新入生には相当なストレスとなっていたという。
「上級生の指示には絶対従うという組織ですから。上下関係の厳しさはコロナに関係なく平常時も同じですが、授業や訓練があれば、そこでは同じ学年だけになる。それでストレスが緩和されるのですが、コロナで授業がない上に、普段は認められている週末の外出もない。毎日24時間、同じ居室の上級生たちと一緒になるわけです」(同前)
40人以上がPCR検査
4月上旬には学生たちにいったん帰省できるという情報が伝えられたこともあったというが、結局、実現しなかった。そうしたなかで、脱柵が起きたという。