しかし歌舞伎界には「女性は子役でしか舞台に立てない」という「掟」がある。
歌舞伎の名門・高麗屋に生まれた松たか子(43才)も、同じく名門・音羽屋の長女・寺島しのぶ(47才)も、それゆえ歌舞伎役者ではなく、女優の道を選ばざるを得なかった。
「生まれたときから家族も周囲も歌舞伎一色。幼少の頃の松さんのいちばんの遊びは“歌舞伎ごっこ”で、雑誌『演劇界』をボロボロになるまで何度も読み、ほとんどの演目の名ぜりふを諳んじられるほどだったそうです。寺島さんも幼い頃から父・尾上菊五郎さんと同じ舞台に立つことを夢見ていたと公言しています。しかし、成長するにつれ、それが決して実現できない“夢”であることを思い知った」(前出・歌舞伎関係者)
そんな女性たちの苦悩を目にしてか、海老蔵のなかには「梨園はこのままでいいのか」という強い思いがあるようだ。
2017年2月、「六本木歌舞伎『座頭市』」で主役を務めた海老蔵が、相手方に指名したのは寺島しのぶ。そのとき、海老蔵はこう話していた。
「歌舞伎がいまの形になってから2~300年という月日が経って、そろそろ考え直す時期(中略)性別を理由に女性が歌舞伎をできないことが、ぼくにはわからなかった」