ここからわかるのは、男が気にするのは家庭や職場での自分の地位・既得権を守ることで、実害がないのなら、無能な男より有能な女のリーダーを好む(性別より能力を優先する)ということだ。「あんな女が上司だったら最悪だな」といいながら、「都知事ならべつにいいか。自分には関係ないし」というのが世のサラリーマンの本音ではないだろうか。──小池都知事もこのことに気づいていて、だからこそ「保守」の看板を掲げ、男社会の既得権を侵すつもりがないというメッセージを送っているのだろう。

 女性有権者も同じで、「女を武器に男をたらしこんで権力をつかんだ」と批判されても、「ああいうタイプが友だちだったらイヤよね」といいながら、「日本の男社会でのし上がるには『女帝』になるくらいじゃなきゃ」と逆に人気が上がるのではないだろうか。

 日本の女たちは、これまで旧態依然の組織でセクハラやパワハラの理不尽な扱いに耐えてきた。そんな体験をしてきた身からすれば、小池都知事が都庁幹部の男たちにかしずかれ、男社会の権化である自民党の有力者や都議会の「おっさん」たちと互角に渡り合うのを見るのは痛快だろう。

 そのように考えれば、「小池百合子」とは、日本の女たちの「復讐」のアイコンなのかもしれない。

【プロフィール】たちばな・あきら/1959年生まれ。作家。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』『上級国民/下級国民』などベストセラー多数。最新作は『女と男 なぜわかりあえないのか』。

※週刊ポスト2020年7月10・17日号

関連記事

トピックス

STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
水原一平容疑者は現在どこにいるのだろうか(時事通信フォト)
大谷翔平に“口裏合わせ”懇願で水原一平容疑者への同情論は消滅 それでもくすぶるネットの「大谷批判」の根拠
NEWSポストセブン
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
女性セブン
宗田理先生
《『ぼくらの七日間戦争』宗田理さん95歳死去》10日前、最期のインタビューで語っていたこと「戦争反対」の信念
NEWSポストセブン
焼損遺体遺棄を受けて、栃木県警の捜査一課が捜査を進めている
「両手には結束バンド、顔には粘着テープが……」「電波も届かない山奥」栃木県・全身焼損死体遺棄 第一発見者は「マネキンのようなものが燃えている」
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
(写真/時事通信フォト)
大谷翔平はプライベートな通信記録まで捜査当局に調べられたか 水原一平容疑者の“あまりにも罪深い”裏切り行為
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
眞子さんと小室氏の今後は(写真は3月、22時を回る頃の2人)
小室圭さん・眞子さん夫妻、新居は“1LDK・40平米”の慎ましさ かつて暮らした秋篠宮邸との激しいギャップ「周囲に相談して決めたとは思えない」の声
女性セブン
いなば食品の社長(時事通信フォト)
いなば食品の入社辞退者が明かした「お詫びの品」はツナ缶 会社は「ボロ家ハラスメント」報道に反論 “給料3万減った”は「事実誤認」 
NEWSポストセブン