ここからわかるのは、男が気にするのは家庭や職場での自分の地位・既得権を守ることで、実害がないのなら、無能な男より有能な女のリーダーを好む(性別より能力を優先する)ということだ。「あんな女が上司だったら最悪だな」といいながら、「都知事ならべつにいいか。自分には関係ないし」というのが世のサラリーマンの本音ではないだろうか。──小池都知事もこのことに気づいていて、だからこそ「保守」の看板を掲げ、男社会の既得権を侵すつもりがないというメッセージを送っているのだろう。

 女性有権者も同じで、「女を武器に男をたらしこんで権力をつかんだ」と批判されても、「ああいうタイプが友だちだったらイヤよね」といいながら、「日本の男社会でのし上がるには『女帝』になるくらいじゃなきゃ」と逆に人気が上がるのではないだろうか。

 日本の女たちは、これまで旧態依然の組織でセクハラやパワハラの理不尽な扱いに耐えてきた。そんな体験をしてきた身からすれば、小池都知事が都庁幹部の男たちにかしずかれ、男社会の権化である自民党の有力者や都議会の「おっさん」たちと互角に渡り合うのを見るのは痛快だろう。

 そのように考えれば、「小池百合子」とは、日本の女たちの「復讐」のアイコンなのかもしれない。

【プロフィール】たちばな・あきら/1959年生まれ。作家。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』『上級国民/下級国民』などベストセラー多数。最新作は『女と男 なぜわかりあえないのか』。

※週刊ポスト2020年7月10・17日号

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