米ニューヨークのロックフェラープラザで朝のニュース番組に出演したBTS(写真/GettyImages)

◆公式ペンライトをオンラインでもうまく活用

 ここまで爆発的な成功を収めた理由には、チケット代金が通常のコンサートに比べて安価だったことや、オンラインで世界中の人に視聴されやすかったこと、いつもなら瞬時に売り切れるBTSのコンサートチケットが売り切れる心配もなく、これまで見られなかったファンにも届いたことなどがある。

 また、BTSの公式ペンライト「ARMY BOMB」をうまく活用したことも大きい。元々はコンサートの応援グッズだったペンライトだが、スマートフォンからファン向けのコミュニティサイト「Weverse」にアクセスして、「ARMY BOMB」をBluetoothでペアリングすると、映像に合わせて「ARMY BOMB」が色々なカラーで光る仕掛けを施していた。視聴者はオンラインで映像を見ながら、コンサート会場で実際に応援しているような連帯感を味わえる。オンラインコンサートではこれが重宝され、成功に一役買ったとみられる。

 BTSに続くように、韓国ではK-POPのオンラインコンサートが相次いでいる。韓国映像コンテンツ制作会社大手のCJ ENMも、6月20~26日にかけて、毎日4~5チームのアイドルによるコンサートをオンラインで配信する「KCON:TACT 2020 SUMMER」を開催。世界139か国でチケットが売れ大盛況となった。6人組ボーイズグループ「ASTRO」も6月28日、「オンラインコンサートは何時何処でも何でもできる」というメッセージを込めた「2020 ASTRO Live on WWW」を実施。6人組ガールズグループ「(G)I-dle」も7月5日、オンラインコンサート「I-LAND : WHO AM I」を開催する予定だ。

 ビッグヒットエンターテインメントの創設者・パン・シヒョク氏が2019年11月、釜山で行われた韓国・ASEAN特別首脳会議特別イベント文化革新フォーラム講演で話したことを思い出した。

「技術が世の中と人、ライフスタイルを変える時代になりました。しかし我々は、技術そのものを享受するわけではありません。一つの技術を活用して作られた素晴らしいコンテンツに出会って初めて、その技術の存在を認知し感心するのです」

 K-POP業界は、情報通信技術とエンターテインメントを組み合わせ、コロナ禍でもよりファンを楽しませる仕掛けを工夫し続けている。「非対面」のオンラインコンサートという新たな市場を作り出した次は、3DやAR(拡張現実)といった最新技術を総動員したオンラインコンテンツに向け動き出している。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。

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