こう話すのは、タレント・春名風花、通称“春風ちゃん”の誹謗中傷訴訟を担当するサイバーアーツ法律事務所代表の田中一哉さんだ。『言論の自由』のもと、批評をしてもいいはずだと言う人もいるだろう。しかし、誹謗中傷と批評の間には線引きがあり、相手が誰であろうが、誹謗中傷は犯罪になる。では、その線引きとはどこにあるのか。

「個人の意見や感想に過ぎない場合は、原則として法的措置の対象にはなりません。たとえば、店名や所在地を挙げて『あの店の料理はまずかった』と書き込んでも、それが自身の経験に基づく正直な感想である限り、法的責任を問われません。しかし、『あの店の料理は汚物のような味がした』といった表現は営業主の感情を傷つけます。このような書き込みは、社会通念上許される限度を超える侮辱に該当すると考えられ、営業主は投稿者に慰謝料を請求できます」(田中さん)

 つまり、意見・感想なら何を書き込んでもいいわけではなく、それがたとえ事実でも相手の心情を傷つけないよう表現に気を使うべきなのだ。

 ネット上の誹謗中傷を訴えるための手続きには時間とお金がかかり、容易ではない。しかし、木村花さんの事件を受け、政府は発信者特定の制度改正を検討している。

「改正されれば、被害者はいまよりも早く加害者を特定できるはずです」(田中さん)

 ネットの匿名性は今後ますますなくなっていく。匿名性を笠に着て、卑劣な言葉のナイフを投げてくる人間を私たちは許してはいけない。

※女性セブン2020年7月16日号

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