◆拡大路線から一転、リストラ加速
ファミマが掲げていた拡大路線も裏目に出ている。2009年にam/pm・ジャパン、2016年にサークルKサンクスを買収したことにより、店舗数は1万7500店を超えた。10年で2倍以上の規模となり、ついにローソンを抜いた。勢いを得たファミマの次の目標は「2万店体制」の確立だった。
しかし、コンビニを巡る経営環境は激変した。人手不足に伴う24時間営業の見直しや廃棄ロス対策など、コンビニの成長は踊り場にさしかかった。いや、下り坂を下っているのかもれない。こうなると社員の余剰感だけが強まる。サークルKサンクスを買収する前には、本部社員に占める40歳以上の比率は41%だったが、2019年末には55%にまで上昇した。そこで危機感を強めたのが2018年8月にファミマを子会社化した伊藤忠商事だ。
伊藤忠主導でリストラに乗り出したファミマは早期・希望退職者800人を募集したが、3月末に1111人と想定以上の社員が応募した。ファミマの将来に見切りをつけた社員が多かったということなのだろう。「いなくなっては困る人も多数いた」(関係者)ことから、慌てて慰留した結果、1025人の退社となった。
澤田貴司社長は「コンビニは飽和状態だ。店舗を減らす」と明言。実際に3300店舗近くをクローズして、新規出店を抑制した。2020年3月からは「店舗再生本部」を新設、低い収益力の店を直営化し、稼ぐ力をつけた後に再度フランチャイズ化する作戦だ。
◆「加盟店ファースト」で時短営業を開始
ファミマの2021年2月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高に当たる営業収益は微増の5190億円を見込む。本業の儲けを示す事業利益は前期比32%増の850億円、純利益38%増の600億円と超強気の見通しを明らかにしているが、コロナ禍で30%を超える増益を計画することについて、「コロナの影響を、きちんと決算に織り込んでいるのだろうか?」(ライバル企業のCFO)との声も聞こえてくる。
コンビニはフランチャイズオーナーとの関係が重要だが、どうもこちらもうまく機能していないようだ。
「われわれは加盟店さんファーストだ」──。2019年11月に行われた新たな加盟店支援を発表する記者会見の席上、澤田社長は大見得を切った。しかし、「旧・サークルKサンクスのオーナーとの関係が悪化し、契約を更新せず経営から退くオーナーが増えている」(ファミマの関係者)といわれている。
加盟店支援策に年間110億円の資金を投じ、複数店舗を経営するオーナーに奨励金を出す。本部が経営維持の努力をする店主に報いることを率先してやらなければ、加盟店の脱落に拍車がかかる。
5月25日に緊急事態宣言が全面解除された後、ファミマは6月1日から787店舗の時短営業を開始した。時短営業をやれば日販は落ちるが、「加盟店ファースト」の立場なのだから、時短営業の申請があれば本部は拒否できない。