日本では和歌山県や旅行業界などが数年前から取り組んできた。
和歌山県知事提出の「和歌山県におけるワーケーションの取組について」との資料には、「3年間で104社910名が体験」「85サービス55事業者が登録」といった実績が紹介され、平成29年度からワーケーションに取り組んでいる和歌山県の先進性と好条件をアピールしている。
さらにJTBは、「ワーケーションによる休日の過ごし方の変化」として祝日と土日の間に平日勤務がある週を例に、今までのパターンは「日帰り+1泊2日」で3人家族の消費額は16万7514円、平日をワーケーションにあてると、「5泊6日」の家族旅行(沖縄旅行を想定)が可能となり、3人家族の消費額は65万3400円になるとの試算結果を披露している。
観光戦略実行推進会議があった7月27日の記者会見で菅官房長官はこう言及した。
「本日、観光戦略実行推進会議を開催し、ワーケーションなど国内観光の新しい形についてご提案をいただきました。今後、政府として普及に取り組むため、休暇の分散化などの課題について関係省庁で検討したいというふうに思います」
環境省、観光庁、旅行業界、地方自治体がポスト・コロナの目玉観光政策として期待するワーケーションに、政府がゴーサインを出したわけだ。
また、同日にはNTTデータ研究所とJTB、JALが、6月に沖縄県のリゾートで行った実証事件の結果を発表した。ワーケーションで仕事の生産性20%向上、ストレス軽減効果、仕事とプライベートの切り分けが進む結果が得られたという。いいこと尽くしのようである。
テレワーク同様、日本企業に定着するのは絶望的
このバラ色のような働き方の旗振り役となっているのが環境省で、7月22日から26日には都内の新宿御苑で、テント内に椅子とテーブルを置いてワーケーションの体験イベントを開催した。令和2年度補正予算ではワーケーション推進事業で501の団体に22億円を補助金として支給する。小泉環境相は「1000人以上の雇用が維持できる見込みだ」と会見で語っていた。
「Go Toトラベルキャンペーン」に続く政府の観光業界救済策としての色合いが濃いが、この制度、果たして日本に定着するのだろうか。そこにはいくつもの大きな壁が立ちはだかっている。