【第3の壁】ワーケーションの費用負担と働く人の意識
仮に勤務先の企業がワーケーションを導入したとしよう。問題は旅費や宿泊費を誰が負担するのかだ。
前出のJTBが観光戦略実行推進会議に出した資料にあった家族3人で5泊6日のワーケーション消費額は約65万円。会社が半分でも負担してくれるのだろうか。今の経済状況を考えれば、とても想定できない。
そもそも個人負担でワーケーションを利用したいという人がどれだけいるのか。JTB総合研究所の「働き方の変化とテレワークに関する意識調査」(2020年3月)によると、「テレワークをしたい」は全体の約7割だった。一方、ワーケーション制度を導入している企業はほんのごく一部で、制度の利用状況も「ふだんは一部の人だけが利用している」が40%で最多となっている。
知人の30代会社員にワーケーションを利用するかどうか聞いてみたら、「プライベートな旅行に仕事を持ち込むのは嫌。リゾート地で画面越しに上司の顔を見るなんてサイテー」と言われてしまった。
【第4の壁】エッセンシャルワーカーにはそもそも無理
旅先で仕事といった芸当をこなせるのは、一部の限られた職種にとどまるのではないか。テレワークを実施している企業でも全社員が在宅で仕事をしているわけではない。オフィスにいかなければならない業務の社員が一定数いるのが現実だ。
ましてやエッセンシャルワーカーといわれる医療関係従事者、公共交通関係者、食品販売店従業員、宅配業者などは、そもそも現場を離れられない。