ではなぜ、国民による落選運動が安倍政権倒閣の“最強の武器”になり得るのか。現在の政治状況は事実上有権者に選択肢がない。
「安倍さんのままじゃコロナを乗り切れるか心配」と思っていても、自民党に投票すれば安倍政権が続く。かといって野党に政権を担えるとはとても思えない。それをいいことに、与党議員は“野党がだらしないから選挙に勝てる”とタカをくくって国民を顧みない。
そんな状況で国民が政権にNOを突きつけるには、「落選運動」で与野党の無能な議員を名指して落選させ、主権者の力を見せつけるしかないのだ。国民の政治に対する“暴力装置”が落選運動の本質といえる。
個人でやるなら制限はない
落選運動は誰でも1人で始めることができる。今年の通常国会終盤、検察庁法改正案を廃案に追い込んだツイッター・デモは、5月8日に1人の女性会社員が発信した〈#検察庁法改正案に抗議します〉というツイートから始まったとされる。それを小泉今日子をはじめ多くの著名人がリツイート(引用)したことで国民の間に一気に拡散し、短期間に900万リツイートを超える社会現象となった。
前回総選挙の際、「落選運動を支援する会」を立ちあげた上脇博之・神戸学院大学法学部教授が語る。
「落選運動は個人でやるなら公選法の制限がないから何でもできます。SNSで呼びかけるのが一番手っ取り早い。落選運動という言葉に抵抗がある人は、『落選させましょう』とは言わずに、議員の過去の問題行動を指摘するだけでも効果はある。そこから不特定多数に共感してもらえば、次の選挙で『この議員は当選させたくない』と呼びかけるなどステップアップしていけばいい」