結局、トランプ大統領が本格的に感染防止に舵を切ったのは4月に入ってからだった。
これはコロナ対策として不適切だった可能性が高いが、筆者が注目するのは、この新事実が大統領選挙に与える影響だ。もちろんトランプ氏にとって不利な材料であり、国民の命を意図的に危険に晒したという点で、民主党から大統領辞任を求められても仕方のない事例だと言えるだろう。
トランプ陣営がいかにして反撃に出るか見ものだが、この新刊はかなり大きなダメージになると予想されるから、コロナ問題から有権者の視線を逸らすには、かなり大胆な新機軸が必要になるはずだ。イランへの軍事攻撃、中国とのさらなる緊張など、得意のカオス戦略を考えるかもしれないが、なかなかハードルは高いはずだ。間違いなく打ち出す戦略としては、バイデン氏に対するスキャンダル攻撃くらいだろう。
個人的なことだが、筆者はウッドワード氏に特別な思い入れがある。1970年代にアメリカに渡った頃、ウッドワード氏は、同僚のカール・バーンスタイン氏とともに、ワシントン・ポスト紙上でウォーターゲート事件を追及してスターになっていた。ニクソン大統領を辞任に追い込むまでの活躍は、書籍や映画で広く知られた。苦しい生活にあえいでいた筆者に勇気と希望を与えてくれた2人だった。そのウッドワード氏のペンが、再び大統領を辞任の縁にまで追い込んでいる。