『役立たずのブタ!』が印象的(時事通信フォト)

 吉田氏は『ごちそうさん』(2013年)の西門和枝(キムラ緑子)を推す。

「和枝は、主人公のめ以子(杏)が息子の悠太郎(東出昌大)と結婚しても、入籍させずに女中扱い。め以子が作った膳をひっくり返して床を舐めさせるという理不尽すぎるいびりは強烈でした」

 和枝に対してはSNSで〈見てられない〉〈ひくレベル〉などの声が上がったが、

「和枝がいなくなると物語がトーンダウンし、再登場すると一気に盛り上がりました」(田幸氏)

 というから、やっぱり悪い姑が「見たかった」わけだ。

 いじめっ子が脚光を浴びたケースもある。

「『スチュワーデス物語』(1983年・TBS系)で、主人公・松本千秋(堀ちえみ)が憧れる教官・村沢浩(風間杜夫)の恋人役の新藤真理子(片平なぎさ)。事故で手を失って義手になった真理子が、その責任を村沢のせいにして、村沢も負い目を感じている。真理子が手袋を外しながら『ひろし……』と迫る、憎しみと恨みとゆがんだ愛を醸し出すシーンは忘れられない」(吉田氏)

 テレビ解説者の木村隆志氏が語る。

「以前は、いじめっ子や権威ある地位の人間など分かりやすい悪役がメインでしたが、2000年代に入ると悪役も多様化してきて演者や作り手、視聴者がどう楽しむのかというところに焦点が集まってきている。例えば、警察ものなら上層部というお決まりパターンをいかに外すのか。その一方で『半沢』や『ドクターX』のようなシリーズものである種の分かりやすい巨悪を提示する作品もある」

“名悪役”たちがいるからこそドラマの深みが増すのである。

※週刊ポスト2020年9月18・25日号

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