俳優にとって、ひとつの役柄が大当たりするのは、「そのキャラクターのイメージが常に付きまとう」というリスクもあることだ。しかし、田中の場合は、『おっさんずラブ』で大ブレイクした後も多彩な役柄を次々に演じている。

 田中本人にインタビューした経験のあるドラマ・映画ライターの小田慶子氏は、彼の強みを“演技力”と“人脈”の両面から分析する。

「田中圭さんは、『おっさんずラブ』でブレイクした時点で、どんな役柄でも魅力的に演じられる実力があったことが大きかったと思います。現在のヒットドラマに笑いの要素は必須ですが、女性人気がありながら、自分から笑いをクリエイトできる役者はなかなか他にいません。かつ、シリアスな演技も巧いので、作り手も安心してキャスティングできるのでしょう。

 すでに20年のキャリアがあり、テレビ各局や制作会社に人脈を築いていますし、キャスティング権をもつトップクリエイターにも信頼されています。10月に始まる主演ドラマ『先生を消す方程式。』の脚本家・鈴木おさむさんとは、舞台などで組んできた10年来の仲。

 他に『獣になれない私たち』の脚本家・野木亜紀子さんともかつて『図書館戦争』シリーズで組みましたし、三谷幸喜さんも舞台での縁から映画『記憶にございません!』に田中さんを起用しました。最新主演映画『ヒノマルソウル』の飯塚健監督とは初タッグながら、プライベートでは付き合いがあったとのことです」

 役者としての実力的にも、本人の人柄的にも、“使いやすい”ところが田中の武器と言えるらしい。小田氏は、芸能界での田中のポジションをこう指摘する。

「作り手にとっては頼りになるし、ブレイク後もキャストの番手にそこまでこだわらず、準主役以下でも引き受けてくれるので、オファーしやすいのでしょう。また、ヒロインの相手役としての安定感もあります。つまり相手役としてサブにも、メインにも回れる。田中さんの得意なバスケットボールで言うところの“シューティングガード”のような存在で、当分この座が揺らぐことはないでしょう」

 現在の売れっ子ぶりは、『おっさんずラブ』による“特需”などではなく、確かな理由に基づくもののようだ。

●取材・文/原田イチボ(HEW)

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