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蒼井優が主演作で見せる感情の爆発 過去作品との決定的違い

記者会見に出席した高橋一生(左)、蒼井優(中央)、黒沢清監督(写真/時事通信社)

 蒼井優(35才)が主演を務め、第77回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した『スパイの妻〈劇場版〉』が、10月16日公開された。上映館は全国100館未満と小規模ながらも、初日から3日間で観客動員数は3万人以上を記録、興行収入は4700万円を超えた。SNSや口コミでは「濃厚な物語に引きずり込まれた」「時代の不穏な空気感や狂気を体感できた」「脚本も芝居も『お見事』」と称賛の声が広がっている。映画や演劇などに詳しいライターの折田侑駿さんも太鼓判を押す。

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 公開開始早々、興収ランキング第6位に付け、注目度の高さがうかがえる『スパイの妻〈劇場版〉』。本作は、2020年6月にNHK BS8Kで放送された黒沢清監督(65才)によるドラマ作品を、スクリーンサイズや色調を新たにした劇場版。世界中に熱狂的なファンを持つ黒沢監督の最新作とあり、公開前から多くの期待の声が上がっていた。もちろん筆者も例外ではなく、いち早く試写室に駆け込んで視聴した。ヴェネチア国際映画祭での銀獅子賞受賞にも納得だ。独特な世界観や観る者の不安を煽る演出など、監督の手腕は作品の隅々にまで冴え渡っていた。出演した俳優たちも、主演の蒼井のほか、高橋一生(39才)、東出昌大(32才)、笹野高史(72才)といった演技巧者たちが顔を揃えている。

 本作のストーリーラインはこうだ。舞台は太平洋戦争開戦間近の日本。恐ろしい国家機密を偶然知ってしまった夫の優作(高橋)が、正義のためにその残酷な所業を世に知らしめようとするのに対し、妻である聡子(蒼井)は「スパイの妻」と罵られようとも、愛する夫を信じ支えようとする。だが2人は、戦争という時代のうねりに飲み込まれ、翻弄されていく。

 蒼井と高橋の組み合わせといえば、今年の頭に公開されたタナダユキ(45才)監督作『ロマンスドール』での好演が記憶に新しい。同作はタナダ監督が執筆した小説を、自ら映画化した大人のラブストーリー。今回の『スパイの妻』と同様2人は夫婦を演じ、互いに“嘘=ヒミツ”を抱えながらも共に生きる男女の物語は共感を呼び、多くの支持を得た。そんな作品に続く2人の共演作とあって、いやがうえにも今作『スパイの妻』には期待が集まっていたのだ。

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