――SUVのジャンルはCXシリーズが受け持っていますが、MXと言えば、「ロードスター」の海外名が「MX-5」です。今回、SUVでもMXを冠したネーミングにした狙いはどこにあるのでしょうか。
竹内:MX-30の商品名は、2019年の東京モーターショー直前の9月まで決まっていませんでした。このクルマが新しい価値の創造に値するかどうか社内で審議され、私たちもどんなネーミングになるのか分からないまま進んでいたのです。
そして、クルマの骨格ができ、プロトタイプもほぼできてきた頃に、このクルマは技術呼称や機能を前面には出さない、“自然体”というコンセプトが正式に決まりました。それならば、新しい価値を持つクルマと呼んでもいいだろうということで「MX」を冠することになったわけです。
――確かにMX-30は天地が薄くなったフロントグリルや立体的なリアランプの形状など、これまでのマツダ車のデザインとは少し変えてきていますね。
竹内:人々のこころの支えや生活者に寄り添うクルマになるには、しっかり頼りになる存在になりたいということで、まずシルエットで塊感を出しました。ただ、MAZDA3やCX-30とはまったく別のポジションのクルマで、このクルマのコンセプトやデザインのチャレンジはある意味、メインストリームからは意図的に大きく外しています。
そのため、MX-30で得たデザインヒントを今後も使っていく可能性はあるものの、このデザインをマツダの他車種に横展開していくことは、おそらくないのかなと思います。
――SUVは流麗なスタイルのクルマも引き続き支持されているものの、最近は、比較的ボクシーで武骨さをアピールするSUVも人気があります。敢えてマツダ車の特徴である「魂動デザイン」とは離した、メインストリームではないクルマがMX-30ならば、もっと大胆にデザインを変えてもよかったのではないですか。
竹内:最初のスケッチ段階ではかなり武骨な逞しさも表現していたんですが、これまでの魂動デザインのチャレンジ幅の中で、結果的には今回のデザインで落ち着きました。
ただ、クルマ側面の光の移ろいやフロントグリルのマツダらしいデザインを封印した一方で、より塊感を表現することに挑戦しています。もう1点、諸元的に言えば、実はクルマの最低地上高はCX-30の175mmに対してMX-30は180mmあって、よりSUVらしさを出しています。