もっとも他人に迷惑をかけないのであれば、スピリチュアルにハマるのはそれ自体、悪いことではないと思います。ただ、そこにのめり込み過ぎてしまうと、社会との溝が深まってしまうのではないか、と懸念します。私も、もし自分の心に何か大きな穴が空いていたら、のめり込んでしまうことはあると思う。明日は我が身ですよね」(Aさん)
コロナ禍で再びスピリチュアルブームも
いつの時代にもスピリチュアルを支持する層は、一定数いる。都内の大型書店で勤務していた元書店員のBさん(40代・女性)は、書店でもスピリチュアル関連のものが、安定的に売れていたと振り返る。
「人文社会系フロアで長らく勤務していました。レジをしていて感じたのは、とにかく占い本やスピリチュアル本、某宗教団体の教祖の本がよく売れたこと。それだけではなく、タロットカードやちょっとした水晶アクセサリーなどのグッズも非常に売れていましたね。
こうした書籍やグッズはあえて人文社会系フロアに置いています。そこに宗教学や人類学、心理学の棚があるからという理由だけでなく、高額であまり売れない学術書に売れるスピリチュアル関連の商品を抱き合わせる、という狙いもありました」(Bさん)
スピリチュアルがブームになる背景について、大学で宗教社会学を教える研究者のCさん(30代・非常勤講師)は、次のように解説する。
「1970年代には新宗教、あるいは新新宗教ブームというものがあり呪術や神秘がもてはやされました。しかし、1990年代に入ると阪神淡路大震災、オウム真理教事件が続き、社会不安が広がるとともに宗教への不信感も強まっていった。いわゆる“宗教離れ”です。その頃に流行したのが、反動としての“癒やし系”やヒーリングブームでした。その後、テレビ番組『オーラの泉』(テレビ朝日系)などスピリチュアルが一斉を風靡したことは記憶に新しいでしょう。
スピリチュアリティと宗教の大きな相違点は、その基盤が教団にあるか個人にあるかです。スピリチュアリティは“心の欠乏”や“自己喪失”という言説を前提とする、いわゆる“本当の自分”を取り戻す営みです。インターネットと非常に親和性が高いので、ネットの占いサイトやアプリ、SNSなどを通じて広がっていきます」(Cさん)