NTTドコモモバイル社会研究所の「モバイル社会白書2020年版」によると、スマートフォン所有率は60代が約7割の69%、70代が約5割の48%となっている。パソコンやフィーチャーフォン、タブレットなどを入れると、ほとんどのシニアが何らかの端末を所有しており、ネットサーフィンやネット通販などが当たり前となっているのだ。
さらに、コロナ禍の影響で、シニア層は特に外出を控える人が多かった。また、各種の告知や手続きなども「ネットで」とすすめられることが増えたこともあり、ネットを利用する時間が格段に増加した。そのためネット通販利用も大幅に増えており、それに伴ってトラブルも増加しているというわけだ。
アダルト・出会い系サイトで騙されるシニア層
今のシニア層は、これまで高齢者としてイメージされてきたのとはかなり異なるライフスタイルを実践している。精神的にとても若く、好奇心にあふれ、アクティブな傾向にある。それ故、経験がないことにも貪欲に挑戦するため、アダルトサイトや出会い系サイトを利用して被害にあう例が少なくない。だが、そのような被害を恥じて隠してしまうため、子供など周囲が気づいた時には被害額が大きくなっていることもある。
出会い系サイトでお金を騙しとられてしまった60代女性に、そのきっかけを聞くと、間違いメールへ返信してしまったことが始まりだった。
慣れている人であれば、それは業者による勧誘メールだからと無視して済むものが、アナログの手紙のように、ひとつひとつ返事をしないと失礼と考えてしまったらしい。その返信をきっかけに、メールの先にいる相手と親密なやりとりをするようになった。男性だと名乗る相手とはしばらくメールを交わしたのち、出会い系サイトへ誘導されて登録。その後、彼と連絡を取るためだと言われて数十万円を支払ってしまった。ところが、それから相手の男性と特に進展などなく、騙されたことに気づいたという。
実に古典的な手口だが、そういう詐欺が存在していると知らなかった彼女は、まとまった金を失うこととなった。
ほかにも、ネットを使って恋愛感情を刺激する古典的な手法が、高齢者をターゲットに繰り返されている。無料だと思っていたのに突然「登録完了」の表示が出て料金を請求され、支払ってしまうというアダルトサイトの事例は、一時、かなり広まっていたものだが、最近では高齢者に被害が目立つ。いい年をしてこんなことで騙されてしまった……という思いがよぎり身近な人に相談しづらいことも、被害を大きくしている。