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レスリング五輪金の小原日登美 挫折は無駄ではなかった

(写真/時事通信社)

2011年12月、ロンドン五輪代表に決まり、夫・康司さんにメダルをかける小原日登美(写真/時事通信社)

 2000年から通算8度にわたり女子レスリングフリースタイルの世界選手権で金メダルに輝きながらも、なかなか五輪出場を果たせなかった小原(旧姓・坂本)日登美(39才)。強力なライバルたちに阻まれ、何度かマットを降りた彼女が、再び五輪出場を目指し、2012年ロンドン五輪では金メダルを獲得。その栄光までの道程について、小原本人が語る──。

 2000年、小原は女子レスリングフリースタイル51kg級の世界選手権に出場し金メダルにを獲得。さらに、女子レスリングが五輪の正式種目に採用されるも、小原が出場していた「51㎏級」はなく、48kg級、55kg級、63kg級、72kg級の4階級のみ。48kg級にはともに五輪を目指してきた妹・坂本真喜子選手(35才)がいたため、小原は55kg級に階級を上げた。しかし、全日本選手権55kg級に出場した小原は、吉田沙保里選手(38才)に開始24秒で敗退。小原はそのショックから、一旦レスリングから距離をとったという。

 その後、妹や家族の支えもあり、再びレスリングと向き合うことなった小原。2005年、心機一転、自衛隊体育学校の所属となった彼女は、再び世界の頂点を目指し始める。

 同年、ハンガリーで行われた世界レスリング選手権にて51kg級で優勝し、復活を遂げる。だが、姉妹で出場を目指した2008年の北京五輪では、55kg級は吉田選手、48kg級は伊調千春選手(39才)が代表に選ばれ、姉妹ともども代表入りを逃してしまう。

「選手としてやり切ったような感覚を持ってしまった私は、これを機に引退を決意。その後は、妹を五輪に出場させようとサポートに回りましたが、妹は世界選手権で敗退してしまい……。試合後に『これ以上は無理。お姉ちゃんが次のロンドンを目指して』と言われ、妹は2009年に引退しました。私はその言葉を受け、もう一度、現役に復帰したのです」(小原・以下同)

 翌年、同じ自衛隊所属のレスリング選手である小原康司さん(38才)と結婚。登録名も坂本から小原に変えた。

 ちょうどこの頃、48kg級の代表だった伊調選手が引退。小原は48kg級に階級を下げてロンドン五輪を目指すこととなる。

「この頃、けがで夫も現役を引退することになったのですが、『ぼくの夢は日登美を五輪に出場させること』と夫が言ってくれたことも、励みになりました。夫には、アジア大会(2010年)で優勝を逃したときも支えられました。レスリング関係者が私を励ますためにかけてくれた『アジア大会でよかったよ。五輪だったら取り返しのつかないことになっていたね』という言葉がトラウマになり、ロンドン五輪が近づくに連れて、私は逃げ出したくなってしまったのです。

 そのとき夫が『もし五輪で負けても、一緒に戦ってきた人たちは変わらずにそばにいる。勝っても負けてもその後、普通に生活していくだけだ』と言ってくれ、迷いが吹っ切れて……。本当に夫の存在は、とても大きいですね」

 いくつもの壁が立ちはだかるたびに、夫や家族の言葉で勇気を得て乗り越えられたと語る。その後押しがあきらめそうになったとき背中を押してくれたのだ。

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