●佐久間文子さん(文芸ジャーナリスト)
『炉辺の風おと』梨木香歩(毎日新聞出版)
八ケ岳の山小屋に拠点を持っている著者は、鳥の訪れや、草花の芽吹きで季節を感じながら、謙虚な観察者として自身も自然の一部のように暮らしている。自由に外を出歩けなくなったあいだ、旅に出るような気持ちでこの本を読んでいた。
『死ぬまでに行きたい海』岸本佐知子(スイッチ・パブリッシング)
『日没』桐野夏生(岩波書店)
●温水ゆかりさん(ライター)
『日没』桐野夏生(岩波書店)
近未来小説だが、すぐに“歴史小説ね”と言われるかもしれない。リングネームのような筆名のマッツ夢井。彼女が隔離された思想訓練所のような施設での日々を描く。マッツが腹の中で赤い舌を出しながら書く“正しい作文”に笑う。ラストも圧巻。
『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ 訳・友廣純(早川書房)
『猫だましい』ハルノ宵子(幻冬舎)
※女性セブン2021年1月7・14日号