スポーツ

創価大・榎木監督が明かした「スカウティングと宗教」

往路優勝の立役者のひとりとなった5区の三上選手(時事通信)

往路優勝の立役者のひとりとなった5区の三上選手(時事通信)

 2021年の新春スポーツを彩ったのは、4度目の箱根駅伝で往路優勝(総合2位)を果たした創価大学と、全国大学ラグビー選手権で初の日本一に輝いた天理大学だった。

 創価大は創価学会、天理大は天理教と密接に結びつき、大学スポーツにおける新興ならぬ“信仰勢力”といえる。とりわけ創価大駅伝部の榎木和貴監督は2019年2月の就任からわずか2年弱で大躍進して結果を残した。独占取材に応じた榎木監督はレース前に掲げていた「総合3位」の目標を上回る快挙をこう振り返った。

「コロナ禍によって活動の制限を余儀なくされるなか、純粋に箱根で戦いたいという選手の気持ちが練習に表れて、この結果に結びついた。期待を超える走りを頼もしく感じています」

 1区の福田悠一(米子東)が区間3位と冷静な走りでスタートすると、エース区間・2区のフィリップ・ムルワ(ケニア・キテタボーイズ)、3区の葛西潤(関西創価)が2位で好走し、4区の嶋津雄大(都立若葉総合)がトップに立ち、山登りの5区を走った三上雄太(遊学館)がトップを守りきった。

「すべての区間が往路優勝のポイントでした。5区に襷がつながった時点で、2位と1分42秒差あった。三上が普段通りの力を出せば、往路優勝が見えると思いました」

 復路では9区までトップを維持し、ラストの鶴見中継所の時点では2位の駒澤大に3分19 秒差をつけていた。しかし、最終10区を任された小野寺勇樹(埼玉栄)が徐々に失速し、残り約2㎞の地点で駒澤大に逆転を許した。レース後、榎木監督は総合優勝に届かなかった要因を「指導力不足」と話していた。

「9区まではほぼ100%、選手が力を出し切ってくれましたが、10区については本人の必死の頑張りが結果に結びつきませんでした。小野寺の力を100%引き出すことができなかった点は、やはり私の指導力不足です。小野寺には『この悔しさを一生、忘れるな。でも、卑屈になることはない。この悔しさをバネにして成長すればいい』、そう伝えました」

往路優勝を喜ぶ榎木監督(時事通信)

往路優勝を喜ぶ榎木監督(時事通信)

 宮崎の小林から中央大に進学した榎木監督は、4年連続で箱根を走り、4年連続区間賞を受賞した。旭化成でレース生活を終えると指導者に転身。トヨタ紡績などの指導者を経験し、陸上のエリート街道を歩んできた。

 しかし、創価大はそうした榎木監督が在籍した名門の大学、企業とは異なり、新興のチームだった。

「大学周辺には坂が多いので地の利を活かしたトレーニングができ、屈強な足腰が作れる環境が整っていると感じました。就任当初は、箱根出場を2年続けて逃していたこともあり、選手一人ひとりが箱根で走りたいという強い想いを持っていた。力を出し切れていない選手もいて、隠れた能力を引き出してあげることで、箱根も絶対に戦える。伸びしろの大きいチームだと思いました」

 創価大では1990年頃からスポーツ推薦入学制度を活用し、近年は東京の創価高校、大阪の関西創価高校という系列高校以外のランナーにも積極的に声をかけてきた。そして、2016年には初めてのケニア人留学生となるムソニ・ムイル(現JR東日本)も入学した。2021年は創価大にとって創立50周年となる。この記念の年に向けて、スカウティングにも力が入ったに違いない。

 かつて甲子園で躍動した高校野球の名門・PL学園(大阪)は、母体となるパーフェクトリバティー教団の教会ネットワークを駆使して有望選手の情報を集めてスカウティングに活用し、特待制度で選手を迎え入れる資金は教団信者からの寄付が充てられていた。創価大も創価学会からそういった支援はあるのだろうか。

「スカウティングに関しては、他の大学同様、駅伝部から全国の高校の先生にアプローチをしています。創価大OBの方から、『良い高校生がいる』というような情報が提供されたことはありますが、駅伝部の強化は大学の予算に計上されている範囲で行っています」

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン