では、なぜ新型コロナに感染すると、低酸素血症、呼吸不全に気づかなくなるのか。
「原因はまだわかっていませんが、有力視されているのが、新型コロナウイルスが呼吸中枢の働きを妨げているという説です。ウイルスが呼吸中枢になんらかの影響を与え、酸素不足のシグナルを届かなくさせていると考えられています」(前出・木田医師)
呼吸の乱れは医師や看護師であればすぐに気づけるが、自宅やホテルで隔離療養している場合は発覚が遅れることも考えられる。
「誰もが『ハッピー・ハイポキシア』になる可能性がありますが、その後に急激に肺炎が重症化するのは高齢者だけでなく、40代でも血圧が高めだったり、太り気味、喫煙歴があるなどするとリスクが高まります。自宅やホテルでの療養が増えている状況では、突然重症化する人や急死する人がさらに増えるかもしれません」(前出・讃井医師)
自宅で測定できる
いつ誰が新型コロナに罹患してもおかしくない状況で、もし陽性と診断され、自宅療養となった場合、何に気をつければいいのか。
「呼吸の回数が増えたり、顔や指先の色に異変を感じたら、保健所など指定の連絡先に連絡しましょう。階段を上る、シャワーを浴びるなどの日常の行動の中で、今まではできていたことが苦しくてやりづらくなっているといった変化も気が付くポイントになります」(前出・讃井医師)
わずかな変化を見逃さないために役立つのが、血中酸素濃度を測定するパルスオキシメーターだ。安価なものは数千円で購入でき、自宅療養者に市区町村や医療機関から貸与も受けられる。
「新型コロナの軽症者は1~2時間で急激に悪化することがあるので、心配なら1時間に1回、少なくとも朝昼晩の3回は酸素飽和度を測定したほうがいいでしょう」(前出・木田医師)
“軽症なら心配ない”などと安易に考えず、万が一に備えておきたい。
※週刊ポスト2021年1月29日号