先日終了したNHK大河ドラマ『麒麟がくる』では、織田信長役を染谷将太が演じたが、当初は「イメージが違う」と散々酷評された。織田信長といえば体格が良く、猛々しさと激しさを持つ男性的な魅力のあるイメージが浸透しているからだ。小柄で丸顔、低く太い声でもない染谷は、信長の固定観念を覆すような配役だった。蓋を開ければ、回を重ねるごとに染谷の演じる信長に魅了され、違和感は無くなった。が、それでも信長に対して人々が持っているステレオタイプのイメージは、以前のまま変わらない。
『青天を衝く』では冒頭、徳川家康を演じる北大路欣也が登場し、ドラマの時代背景を解説した。時代劇でよく描かれる家康にもステレオタイプがある。「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」という名言があるように、忍耐強く厳しく、したたかで緻密な戦略家というイメージが一般的だ。『麒麟がくる』では、若かりし頃の徳川家康を風間俊介が演じたが、やはり北大路の方がしっくりぴったりくる。
その意味で、ステレオタイプのない渋沢栄一という人物のイメージを作るのは吉沢亮になるだろう。第1回の平均世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は20%と幸先の良いスタートを切り、注目度も高い。これから1年、渋沢という名前を聞けば、多くの人が爽やかで美しい吉沢亮の顔が浮かべるようになるだろう。新1万円札を目にした時、「えっ渋沢って本当はこんな顔してたの?」と、吉沢の顔を思い出し驚く人が続出するかもしれない。