国内

「医療従事者としての誇りを持て」と叱咤され続けた看護師の疑心暗鬼

「大阪コロナ重症センター」で研修する看護師ら(イメージ、時事通信フォト)

「大阪コロナ重症センター」で研修する看護師ら(イメージ、時事通信フォト)

 パンデミック(世界的大流行)から約一年が過ぎようといういま、新型コロナウイルスの治療に携わる人々をめぐる状況は現在、どうなっているのか。2020年の緊急事態宣言時には、皆で医療従事者へ感謝の気持ちをあらわそうという気運が高まり支援への関心も高かったが、2度目の今、対策はすすんでいるのか。ライターの森鷹久氏が、医療従事者の誇りと重圧に押しつぶされそうになっている現場の声をレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの感染拡大による「医療崩壊の可能性」が叫ばれて久しい。だが、実際の医療現場で働く人たちの多くが、すでに「崩壊している」と感じているのが実情だ。にも関わらず、「医療従事者なのだから」という自負と周囲からのプレッシャーに挟まれ、危険な現場から身動きがとれず、感染しながらも働かざるを得ないという関係者が少なくない。

「昨年、旭川の病院でクラスターが発生した時、マスコミも国も大騒ぎしましたよね。その後、収束したそうですが、地方の病院では今、同じようなことが起きているのに誰も見向きもしてくれません」

 こう話すのは、西日本にある総合病院勤務の看護師・横田麻里さん(仮名・30代)。外科病棟に勤務していたが、病院がコロナ患者を受け入れ始めたところ、院内でクラスターが発生。看護師不足に陥り、感染症対策の知識が浅い横田さんも「コロナ病棟」に半ば無理矢理異動させられた。

「病院なので、それなりの感染対策は取っていたと思います。しかし、昨年の秋頃からコロナ患者数が急増し、入院患者にも重症者が目立ち始めると、急に目が回るような忙しさになりました。休みは週一、日勤だと朝7時から夜の9時まで病院にいて、食事も取れない。みんな疲弊し、少し体調が悪くとも出勤しないといけない、そんな空気だったんです」(横田さん)

 病院長は事あるごとに「医療従事者の誇りを持て」と、若い医師や看護師たちにはっぱをかけたが、この重圧が悲劇を招く。

「熱があるのに言い出せないまま出勤していた看護師から感染者が出ました。そして、この看護師からと思われるクラスターが病院内で発生し、病院としての機能が麻痺してしまったんです。私も濃厚接触者となり検査を受けましたが陰性、それでも念のために勤務は控えてほしいと保健所や自治体から言われました。でも病院は、休むことを認めてくれなかった」(横田さん)

 院内では、スタッフだけで10人以上の感染が発覚。コロナ病棟以外に勤務する看護師の感染も認められ、病院全体がコロナの脅威に晒されていたはずだったという。だが、感染者数が10名以上であるのに対し、濃厚接触者とされたのは、横田さんを含む数名の看護師と、同じく数名の医師のみ。横田さんには小さな子供もいて、検査後3日間だけ自宅での経過観察を許されたが、すぐに現場に引き戻された。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン