「変な言い方ですけど、ちゃんと返しに来る人なんてマシです。社員さんが朝一で出社したら店の裏手にケージに入ったミニチュアダックスの子が置かれてたなんてこともありました。買った飼い主には連絡つかないし、たぶん、購入時にこちらに教えたのはデタラメの電話番号と住所なんでしょう。ペットバブルなんて最悪ですよ」
大金払って犬を買ったのに意味不明の行動だが、飼えなくなった理由があったのだろうか。もっとも、店の大半は返品なんて受け付けていない。それでも実態は店次第の「個別案件」であり、販売時の説明に瑕疵があるとか、篠原さんいわく明らかに「ヤバい人」の場合、しぶしぶ応じることもある。返金も原則しないが、篠原さんの店の場合、めんどくさい相手の場合は返金もしていたという。結局のところ本部の判断、そして相手を見て決めるという。つまるところ、お互い犬や猫の幸せなんて二の次三の次。
「捨てられちゃう可能性もありますから、それよりはマシ、と思うしかないです」
ペットショップや動物病院に犬や猫が捨てられていたなんて話は昔からある。筆者の実家で飼っていた黒猫の三太郎は、妹が通っていた獣医大学で捨てられていた子だった。我が家で好き放題暮らして17年間の猫生を全うしたが、すべての捨てられた子がそうはいかない。ペットショップや動物病院、獣医大など、動物関連の施設なら捨ててもいいと思うのか、後ろめたさが解消されるのか。昔からよくあることとはいえ、理解し難い行為だ。
売れ残りの鳥は死ぬまで、ハムスターは200円で投げ売り
それにしても、篠山さんは半年ほどしか働いていないというのにこれだけのエピソード、非常識な人間はいくらでもいるということか。
「それだけじゃないです。2ヶ月たって返品するって男性もいました。さすがに社員さんも驚いてましたよ。彼女にプレゼントしたけどトイレを覚えないし、うるさく吠えるんで彼女からいらないと言われたって。さすがに店長も拒否してましたけど、あの子はどうなったのでしょう」
どうなったのもなにも、誰か別の人にあげたか、保健所に連れて行ったか ―― 筆者にはまったく理解できない連中だが、「そういう人間」は普通にいる。その男も彼女も「そういう人間」の類いだ。ひとたび飼い主となったなら、ペットはその欠点も含めて我が子同然に可愛い存在であると同時に責任が伴うはずだ。子犬も子猫も、飼い主を実の親のように頼るしかない。そんな我が子を虐待する人間、捨てる人間、他人にサプライズプレゼントという名の「遺棄」をして美談気取りのタレント ―― だが、彼らはたとえ非難されても、何が悪いかすらわからないだろう。そういう人間からすれば「物」であり、タレントからすれば自分を飾るためだけのファッションなのだろう。