ああ

岩崎宏美は2003年の『みんなのうた』で『笑顔』を歌った

 クレイジーケンバンドのボーカルや作曲家、作詞家として幅広いジャンルの音楽に携わる横山剣(60才)も、幼い頃から『みんなのうた』に慣れ親しんだ。

「当時から子供をなめることなく、子供向けでもしっかりしたクオリティーの楽曲を大人が一生懸命に作っていることを、幼いながらに感じていました。歌詞がテロップで出て、子供でも音楽を聴きながら歌詞がわかるのもよかった。作詞作曲するうえで原点となる番組でした」(横山)

『みんなのうた』を熱心に視聴した横山は、「大人になったらこの番組に楽曲を提供するんだ」というイメージを抱き続けた。その思いが現実になったのが、子供の頃に感じた将来への不安を振り返り、聴く者を励ます『スパークだ!』(2014年)という曲。歌詞に込めた思いを横山が語る。

「NHKの依頼を受けたときは『よし、キター!』って感じでした。ぼくの子供の頃は、宇宙飛行士やオリンピック選手やカーレーサーになりたいと思いながら、このまま大きくなって本当に“なりたい自分”になれるのかという悩みや葛藤があった。そうした子供心を振り返って、『スパークだ!』とエールを送るのがこの曲です」(横山)

 子供の夢を後押しするこの曲は、あの頃、『みんなのうた』を見ていた自分に向けた歌でもあったという。

 歌手の半崎美子(40才)は2017年に放送されたデビュー曲『お弁当ばこのうた~あなたへのお手紙~』で、愛情のこもった弁当を手紙代わりに、子供の成長をそっと見守る母の姿を描いた。

 半崎は当時、デビューもしていない無名の新人。『みんなのうた』で楽曲が放送されたのは、歌手になるために生まれ育った北海道から縁もゆかりもない東京へ乗り込んで16年あまりが過ぎた頃。地道にショッピングモールでのライブを続けていたときのことだった。約1年もの歳月をかけて作られた彼女の曲は、同じ時期に放送されていたほかの曲が1曲2分20秒の放送時間のなか、フルバージョンの4分40秒が放送されたのだ。彼女が番組の影響力を思い知ったのは、放送後の反響からだ。

「ショッピングモールのミニライブのお客さんには、それまで音楽を聴かなかったかたが目立つようになりました。おじいちゃんやおばあちゃんの反響も大きく、自分の子供の頃を振り返って親世代を懐かしむかたが多かった。『70年生きていて、初めてCDを買いました』というかたもいらっしゃいました」(半崎)

「お弁当」という誰もが知るアイテムをめぐって、作る人と作ってもらう人の思いやりや感謝が交錯する。Mr.ChidrenのPVなどで知られる、日本を代表する映像作家の半崎信朗さんが制作した映像も相まり、この曲は広く人々の心に届いた。

 半崎はこの番組で人生が変わったと語る。

「『みんなのうた』という普遍的で、誰もが知っている番組で放送されたことが、私の曲の浸透にもつながりました。そこをベースにみんながお弁当に自分自身を投影したからこそ、各地で共感していただいたのだと思います。この先私がこの世からいなくなってもこの曲が歌い継がれていくといいなと思っています」

 渾身の一曲は今回のランキングでも50位内に入り、名実ともに「歌い継がれる歌」の1つとなった。

※女性セブン2021年3月11日号

横山剣も『スパークだ!』を『みんなのうた』に提供

横山剣も『スパークだ!』を『みんなのうた』に提供

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン