ライフ

『小村雪岱展』を訪れた壇蜜「様々な妄想がかき立てられて…」

着物姿で現われた壇蜜は、雪岱の世界観に触発され…

着物姿で現われた壇蜜は、雪岱の世界観に触発され…

 美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜。日本美術応援団の2人が、日本の美術館や博物館の常設展を巡る「美術館に行こう!」シリーズの特別編。

 今回は、大正から昭和初期にかけて、様々なジャンルで偉才を発揮し一時代を築いた小村雪岱の足跡を辿る『小村雪岱スタイル――江戸の粋から東京モダンへ』展に2人が訪れた。着物姿で現われた壇蜜は、雪岱の世界観に触発されて、いろんなポーズを取り始めて……。

 * * *
山下:日本橋室町の三井記念美術館で開催中の東京展では日本橋の花柳界を舞台にした泉鏡花『日本橋』の装幀本から展示が始まります。大正3年、雪岱初の装幀です。

壇蜜:色使いや構図がとてもモダン。絵を見ただけで様々に妄想がかき立てられて、物語が浮かびます。

山下:昭和に入り、朝日新聞に連載された小説『おせん』の挿絵で雪岱は確固たる地位を築きました。「雪岱調」といわれる江戸情緒溢れる画風を完成させ、“昭和の春信”と讃えられるほどの存在に。『おせん 縁側』と鈴木春信の『夜更け』を比べると、床面の斜めの線や女性のしなやかな体の動きがよく似ています。

壇蜜:衿のラインにも共通点がありますね。雪岱の描く女性は扇情的でなく美少年のように凜々しい。『おせん 縁側』はおせんが胸をはだけていても、全然いやらしさを感じさせません。

山下:女性が中性的に描かれているからです。敬愛する泉鏡花の紹介で結婚はしましたが、おそらく雪岱は女性を性的な対象として見ていなかったのでしょう。

壇蜜:美しい女性を美しいと判断はしても作品というか、アートの延長として捉えているような印象です。

山下:ゆえに、これだけ清潔な女性像が描けたのだと感じます。肉筆画の『こぼれ松葉』でも風に舞う1本の松葉を眺める女性の清らかで美しいこと。料理に喩えるならば、雑味のない最高のすまし汁のようです。

壇蜜:柚子の皮(=松葉)を添えただけの、上品でやさしいお出汁の味わいを思わせます。静寂な畳の間に三味線と鼓がひっそり佇む『青柳』も、惹かれます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン