家庭では2人の娘に恵まれ、幸せそのものだった。しかし、十数年前に娘たちが家を出て、芳雄さん、志のぶさん、太喜雄さんとの4人暮らしが始まった頃から綻びが見え始めた。高齢の芳雄さんと志のぶさんに、介護が必要となったのもこの頃だ。介護は政子被告がひとりで担うこととなった。2018年6月に夫の太喜雄さんが脳梗塞で倒れるが、それでも政子被告は気丈だった。

「一命は取り留めたものの、医師から『このままだと植物人間になる』と告げられた太喜雄さんは、『人間やめるしかない』と落ち込んでいたそうなんです。政子さんは、自分がなんとかしなければと思ったんでしょう。後遺症で足が不自由になった太喜雄さんのために、毎日車のハンドルを握って会社への送り迎えを始めたのです。体が不自由な太喜雄さんの送迎は一苦労で、車に乗せるだけで数十分かかることもあったそうです」(岸本家をよく知る近隣住民)

 2019年5月には、義父・芳雄さんの糖尿病が悪化。政子被告の負担は大きくなったが、自ら看病を買って出た。

「芳雄さんは入院を嫌がりました。すると政子被告が『私がなんとかします』と引き受けました。その甲斐あって次の検査の際には驚くほど数値が改善していて、主治医も『専門家でも難しいのに、相当食事療法を勉強して頑張った結果でしょう。ここまでやれる姿を見ていると、本当の親子かと思いました』とおっしゃっていたほどです」(被告の弁護を担当するよつば法律事務所の弁護士・端将一郎さん)

 皮膚科に通院していた義父に、処方された4種類の薬を背中、腕、陰部などに朝晩2回ずつ塗るのも政子被告の日課となった。月日の経過とともに、義父母の介護負担は目に見えて増えていった。

「芳雄さんと志のぶさんは、歩くことはできましたが、足腰の力が衰えていたので、政子さんは『寝たきりにならないように』と、できる限り自分で排泄できるようにふたりの寝室にポータブルトイレを設置していました。オムツ交換はもちろんですが、トイレの後始末も嫌な顔せず1日に数回行っていたようです。それに加え、志のぶさんは腹痛を訴えることが多くなり、毎日座薬が必要になっていました」(前出・近隣住民)

 夜中でも志のぶさんが痛みを訴えれば、落ち着くまで政子被告は毎晩のように背中をさすり続けた。

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