左古:卵は、ほぼ完全栄養食品といわれるほど、栄養がバランスよく含まれてる食品ですよね。ゆで卵の回は、確か見合いをした男が実はヅラで、いつそのことを相手に告白するかで悩んでるという話でしたね。
安倍:どうせならということでスキンヘッドにして告白するんだけど、ふられてしまう。
左古:でも、その後、社内結婚して新婚旅行で由布院へ行く。マスターに届いた結婚を知らせるハガキには彼女と一緒に温泉に入っている写真が印刷されていて、嬉しそうに笑っている男の姿が温泉卵にしか見えないというオチで、上手いなと思いました。
“銀杏でギンギン”だったのに(笑)
左古:卵は調理方法によって得られる効果が違ってくるみたいで、栄養の吸収が一番いいのは温泉卵で、次が半熟卵。それで、ゆで卵は育毛効果があるみたいですね。
安倍:そういわれてますよね。
左古:銀杏の回は、どんな話でしたっけ。
安倍:坊さんの息子がフランス人と結婚して、教会で式を挙げる話です。
左古:ああ、未亡人に手を出した性豪の坊さんが結婚相手の父親に愛人を取られるというストーリーでしたね。
安倍:銀杏が好物でギンギンだったのに、インポになってしまい、愛人に「勃たないくせに」といわれる。
左古:きついセリフですね。銀杏は即効性があるスタミナ食としても昔から食べられてますけど、食べ過ぎると中毒症状が出ることがあるっていわれてますね。
豚足の回は”お茶漬けシスターズ”と、彼女たちの大学の先輩の話でしたね。
安倍:豚足はコラーゲンがたっぷりだし、女性がかぶりついてると絵になるので描きました。
左古:歌の上手い先輩で、彼女が披露宴で『愛の讃歌』を歌うと、その夫婦は必ず離婚するという話でしたね。
安倍:実はあの女性にはモデルがいるんです。
左古:そうなんですか。
安倍:ボクの知り合いで歌が自慢の女の人がいたんですけど、その人が結婚式で頼まれて『愛の讃歌』を歌うと、必ず別れるんだって(笑)。
*本文は、新刊『スタミナ深夜食堂』の内容をもとに再編集したものです。
【プロフィール】
安倍夜郎(あべ・やろう)/1963年、高知県生まれ。CM製作会社勤務を経て、2004年に『山本耳かき店』で漫画家デビュー。『ビッグコミックオリジナル』連載の『深夜食堂』は2009年にドラマ化、2010年に第55回小学館漫画賞一般向け部門、第39回日本漫画家協会賞大賞受賞。その他の著書に『生まれたときから下手くそ』『酒の友めしの友』など。
左古文男(さこ・ふみお)/1960年、高知県生まれ。1986年に『YOKOHAMA BAY CITY BLUES』で漫画家デビュー。現在は文筆家・漫画家・編集者として幅広く活動。主な著書は『四万十食堂』(安倍夜郎氏との共著)、『コケを見に行こう!』『クセがつよい妖怪事典』などの他、企画・編集作品に漫画家・水木しげる氏の最後のインタビューをまとめた『ゲゲゲのゲーテ』がある。