芸能

『おちょやん』の弟はなぜ放火しようとしたのか ヤクザと芸能秘史

杉咲花主演『おちょやん』ではなぜか重要な場面でよく「ヤクザ」が…(時事通信フォト)

杉咲花主演『おちょやん』ではなぜか重要な場面でよく「ヤクザ」が…(時事通信フォト)

 松竹新喜劇の看板女優・浪花千栄子の生涯を描いたNHK連続テレビ小説『おちょやん』を観ていると、なぜか重要な場面でよく「ヤクザ」が出てくる。昭和初期という時代、関西の芸能においてヤクザの存在は不可欠であり、ストーリー上、無視できないものだったのだろう。フリーライターの鈴木智彦氏がレポートする。

 * * *

まず父親の借金相手がヤクザ

『おちょやん』に最初にヤクザが登場するのは、年季明け間近、主人公・千代(杉咲花)の父テルヲ(トータス松本)が芝居茶屋『岡安』を訪問した時(第4週)だった。テルヲは博奕で膨大な借金を作り、千代を頼ってきたのだ。借金の相手はヤクザだった。ドラマでは2000円となっていて、「千代が何年ただ働きをしても返せない大金」と表現されている。

 父親が借金取りのヤクザと話している現場を目撃した天海一平(成田凌。後の千代の夫)は、相手の話しぶりや「娘を売る」などのキーワードから、ヤクザと父親が、千代を「怪しい料亭」に奉公させるのだろうと推測した。関西でいう「怪しい料亭の仲居」とは、ちょんの間の売春婦である。

 博徒の寄生基盤は、庶民に根付いていた自己責任の概念だ。当時の庶民には、博奕の借金はなにがなんでも返さねばならず、返済のために田畑、家屋敷、娘を売っても致し方ないという考えが根強くあった。

 元来、賭客は現金を持たないと博奕に参加できない。

 ヤクザはテルヲに若い娘がいるのを知っていたのだろう。回収できなくても娘を売ればいい。だからどんどん金を貸し付け、博奕にハメた経緯が想像される。

『岡安』の女将・岡田シズ(篠原涼子)は、ヤクザが取り立てに来た当日、わざわざ彼らを店に上げてから千代を逃がし、請求額の2000円のうち200円だけを支払って話を付けた。今なら警察に相談するような話だが、当時は常識が違う。ヤクザが出てきた時点で、シズは地元のヤクザの親分に相談していたのだろう。相談を受けた親分は喜んで手助けする。繁華街のヤクザにとって地元の商家は“隣人”だからだ。地域の旦那衆を守り、金は自分の賭場に落としてもらわねばならない。

 ヤクザの関与は、掛け合いでシズが切った啖呵をみても明らかだ。

「余所者が調子に乗ってたらどないなことになるか、わからしまへんで。ああ、そないいうたら先週も、他所から来たヤクザもんが道頓堀川に浮いてはりましたなぁ」

 彼女は“自分のバックには地元のヤクザがいて、あまりごねると殺されるぞ”と恫喝したのだ。

 当時は芝居の他、興行全般がヤクザのシノギだった。実際、荷(芸能人)を巡って何度も殺し合いが起きている。この放送回の最後では「ここは芝居の街、全部芝居だ」(だから“ヤクザの脅し”も芝居だ)というオチになったが、それはあくまで今の暴力団排除の世相を反映させたエクスキューズにすぎない。

関連記事

トピックス

「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
受賞者のうち、一際注目を集めたのがシドニー・スウィーニー(インスタグラムより)
「使用済みのお風呂の水を使った商品を販売」アメリカ人気若手女優(28)、レッドカーペットで“丸出し姿”に賛否集まる 「汚い男子たち」に呼びかける広告で注目
NEWSポストセブン
新関脇・安青錦にインタビュー
【独占告白】ウクライナ出身の新関脇・安青錦、大関昇進に意欲満々「三賞では満足はしていない。全部勝てば優勝できる」 若隆景の取り口を参考にさらなる高みへ
週刊ポスト
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
《出所後の“激痩せ姿”を目撃》芸能活動再開の俳優・新井浩文、仮出所後に明かした“復帰への覚悟”「ウチも性格上、ぱぁーっと言いたいタイプなんですけど」
NEWSポストセブン
”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン