浪花千栄子(写真/共同通信社)
浪花千栄子とほぼ同年代の水谷八重子(初代)は、〈基督なんかも、その昔の一種の 客だったのでせうね。己れを犠牲にして大きな愛で凡てを包むことは大変に尊い事と存じます。此の意味で私は基督の侠客的気分が大好です〉と、新劇から新派(旧派である歌舞伎に対する現代劇)を歩んだ大女優らしいユニークなコメントを同誌に寄せている。
『おちょやん』の生きた大正から昭和の時代は、市民生活の中にヤクザという隣人がいた。彼らは決して、勧善懲悪ドラマの悪役ではない。
【プロフィール】
鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。溝口敦との共著『職業としてのヤクザ』(小学館新書)が4月発売予定。
※週刊ポスト2021年4月2日号