国内

暴力を正当化する典型的なDV夫 家族カウンセラーはどう対処するか

aa

夫から長年暴力を振るわれている妻が語った典型的なDV夫の実態(写真はイメージ)

 緊急事態宣言は解除された。しかし、コロナ以前の日常はまだまだ戻りそうにない。マスク生活、黙食、テレワーク……それは変わってしまった夫婦生活もまた同じだろう。家族問題カウンセラーの山脇由貴子さんのもとには、悩みを抱えた女性たちが数多く訪れている。山脇さんが、実際に相談にきたある夫婦の話を紹介する。

 * * *

2人目が生まれてから夫婦関係が悪化した

 その日、私のカウンセリングルームにいらっしゃった女性は、一目見て深刻な悩みを抱えているとわかる思い詰めた表情をしていました。

夫/慎介(49歳)会社員
妻/裕子(43歳)契約社員
長女(11歳)
長男(7歳)

「どうされましたか?」。私はいつも通りハーブティーをいれ、お悩みの内容を伺いました。

「夫から暴力を振るわれるんです」

 そう言ったきり裕子は黙ってしまいます。いつもであれば、私はあまり口を挟まず一通り話を聞くのですが、夫からの暴力に関する悩みはとりわけ話しづらいものです。そして、何をどう相談したらいいのかわからずに、藁にもすがる思いでカウンセリングに来るかたも多いのです。私はゆっくりと尋ねました。

「頻度はどのくらいですか?」

「毎日、ではないですが、週に何日かはあります」

「どんな暴力ですか?」

 私の質問に、裕子は静かに、ためらいながら答えました。

「殴られたり……蹴られたこともあります。物を投げつけられたりもします。リモコンとか、お皿を投げられたこともあります。あと、私に向かってではありませんが、椅子を壁に投げつけたり……。壁やドアを蹴ることもあります」

「いつ頃からですか?」

「はっきりは覚えていないですが、ずっとです」

 どうして今まで我慢してきたんですか? そう質問をしたいところですが、後にしました。先に聞かなくてはならないことがたくさんあるからです。

「どんな理由で暴力を振るわれるんですか?」

「もともと主人はキレやすいんです。ちょっとしたことで怒り出します。子ども達のおもちゃが片付いてないとか、私が主人のスーツをクリーニングに出していないとか、子ども達の見ているテレビがうるさい、食事が気に入らないとか。仕事でうまくいかないことがあった時も、怒鳴られたりします。たくさんありすぎて、覚えていないんですけど」

 殴られた理由を思い出せない。これはDV被害に遭い続けた女性にとても多い傾向です。頻度が多すぎるからです。虐待を受けた子ども達も「なんで殴られたのか理由を覚えていない」と言います。自分としては悪いことをした記憶はないのに殴られるからです。

「今、思い出したんですけど、2人目が生まれてから、ひどくなったんです。下の子が泣いているのをあやしていて、上の子の面倒が見られず、上の子が泣いているのがうるさいとか、私が手一杯で家事に手が回らず、片付けができていないとか、子どもを寝かしつけて一緒に寝てしまって、帰ってきた主人に食事の用意ができないとか。もちろん、テーブルの上に用意はしておくんですけど、叩き起こされて怒鳴られて、殴られました。『ちゃんと温めろ!』『俺が帰ってきたらすぐ起きろ!』って」

 下の子はもう7歳。我慢するには、あまりにも長い時間です。

 2人目の子どもが生まれてから夫婦関係が悪くなった、という相談も実は多く受けます。2人目が生まれると妻は急激に忙しくなり、家事と育児に手が回らなくなって、今までできていたことができなくなってしまい、そのことに夫が腹を立てる。また、夫に育児を手伝ってもらいたいのに夫に断られた、などの理由があります。手伝ってくれるけれど、夫のやり方が不満、というケースもあります。私は裕子にさらに聞きました。

「一度キレると、何発くらい殴られるんですか? もちろん、数えていないと思いますし、いろいろでしょうが」

「あまり覚えていないです。1~2発で済む時もありますけど、何発も殴られることもあります」

「辛いですね」

 私がそう言うと、裕子はうなずいた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

茨城県水戸市のアパートでネイリストの小松本遥さん(31)が殺害された
《水戸市・31歳ネイリスト女性死亡》「『誰かのために働きたい』と…」「足が早くて活発な子」犯人逃走から6日間、地元に広がる悲しみの声
NEWSポストセブン
浅田真央と村上佳菜子の“断絶関係”に変化
《声をかけて寄り添って》浅田真央と村上佳菜子の“断絶関係”に変化 沈黙から一転、見られていた「雪解けの予兆」
NEWSポストセブン
新宿の焼肉店で撮影された動画が物議(左は店舗のInstagramより、右は動画撮影者より提供)
《テーブルの上にふっくらとしたネズミが…》新宿・焼肉店での動画が拡散で物議、運営会社は「直後に殺処分と謝罪」「ねずみは薬剤の影響で弱って落下してきたものと推察」
NEWSポストセブン
新年一般参賀に出席された秋篠宮家次女・佳子さま(2026年1月2日、撮影/黒石あみ)
《新年一般参賀で見せた“ハート”》佳子さま、“お気に入り”のエメラルドグリーンドレスをお召しに 刺繍とハートシェイプドネックがエレガントさをプラス
NEWSポストセブン
元仙台高裁判事の岡口基一氏
「裁判所当局が嫌がった核心は白ブリーフだった」 弾劾裁判で法曹資格を失った岡口基一氏が振り返る「岡口裁判の急所」とは 裁判所と司法記者クラブの問題点も指摘
NEWSポストセブン
新年一般参賀に出席された皇后雅子さま(2026年1月2日、撮影/黒石あみ)
《新年一般参賀の“ブルーリンク”コーデ》皇后雅子さまはスタンドカラーでフォーマルに、愛子さまはマオカラー風で親しみやすさを演出
NEWSポストセブン
ネイリストの小松本遥さん(31)が殺害された水戸市のアパート
「赤ちゃんをかばおうとしたのか…」「複数の凶器で犯行」水戸市で死亡のネイリスト女性(31)がかつて警察に相談していた“人間関係トラブル” 
NEWSポストセブン
1995年、チャリティーゴルフ前夜祭に参加した“ジャンボ”こと尾崎将司さん(左)と長嶋茂雄さん
【追悼・ジャンボとミスターの物語】尾崎将司さんと長嶋茂雄さん、昭和のスポーツ史に名を刻んだレジェンド2人の重なる足跡 ライバルと切磋琢磨し、後進の育成に取り組んだ
週刊ポスト
松田烈被告
「スマホから『映してください』と指示の声が…」ネットで“性的暴行してくれる人を募集”した松田烈被告(28)、被害女性が語った“外道すぎる犯行”
NEWSポストセブン
真美子さん(共同通信)が使用していたブランドとは
《ハワイ・ファミリーデートで真美子さんが持っていたプチプラバッグ》「同年代インフルエンサーのアスレジャーブランド」か?と話題に 実用性の高いトートバッグ、大谷は「娘のベビーカー担当」
NEWSポストセブン
郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「奥羽山脈周辺に“異常変動”が集中」「千葉県が大きく沈降」…2026年初めに警戒すべき5つの地域
週刊ポスト
ジャーナリストの溝口敦氏(左)とフリーライターの鈴木智彦氏
《溝口敦氏×鈴木智彦氏が対談》山口組抗争終結後の暴力団 勝ったはずの六代目山口組含めて勢力は縮小、トクリュウのほうが経済規模も大きく勢いがある現状
週刊ポスト