国内

大腸がんステージIVの24才母「告知から2日で決めた卵子凍結」

ステージIVで出産するに至るまで

がんステージIVで出産するに至るまで(2019年12月、結婚式にて)

 19才で出会った彼と、22才で結婚し、翌年出産。屈託のない笑顔で娘のことを語る彼女は、至って普通の若いママだ。ただ、彼女は21才でステージIVのがん宣告を受けた──青森県出身の遠藤和(のどか)さん(24才)が、命がけの出産にかけた思いを振り返る。

 和さんの大腸がんが発覚したのは2018年9月5日。同年10月3日に、がんの進行は「ステージIV」という診断を受けた。「一刻も早く抗がん剤治療を」という医師の言葉を和さんは受け止めきれなかったという。

「大腸がんとわかってはいても、詳しい病状はわかっていなかったので、ステージIVという診断を聞くまではすぐに治ると思っていたんです。『抗がん剤』という言葉を聞いて『そんなに悪いんだ』と。さらに、『抗がん剤治療の副作用で不妊になることがある』と説明を受けました」(和さん・以下同)

 子供を生めないかもしれない──21才の女性にとって辛い宣告だったことは想像に難くない。医師からは同時に、「抗がん剤を使用する前に、卵子を凍結保存しておく方法がある」と説明された。彼女は、当時の胸中を日記に書き記していた。

【2018年10月3日(水)】
〈抗がん剤の副作用で不妊になる可能性あるって言われて悲しくてたまらない。卵子凍結か、このまま治療か。卵子だけ残しても、妊娠できる確率はすごく低い。不妊になったら今(卵子を)採らなかった事を後悔すると思うけど、何百万円もかけられない。結婚してないから受精卵も作れない。小さい時からお母さんになるの夢だったから諦め切れない。悲しいけど、辛いけど、現実的に考えて、このまま治療した方がいいかな〉

 卵子凍結の工程は、月経開始直後から開始する。和さんがステージIVの大腸がんと診断された10月3日は、月経予定日の2日前。迷っている時間はなかった。

「主治医から『抗がん剤治療の開始は次の月経まで待つことはできない』と言われました。2日間で、抗がん剤治療を始めるか、卵子凍結をするか、選ばないといけなかったんです」

 悩みの種はもう1つあった。日本生殖医学会の指針によると、受精卵の凍結保存は、基本的に婚姻関係にあるカップルにしか認められていない。和さんは当時未婚だったため、未受精卵子を保存するしかなかった。「本当は妊娠率が高いとされる受精卵を保存したかった」と和さんは振り返る。

「(夫の)遠藤(将一)さん(30才)と付き合い始めて2年経ったころでした。遠藤さんはいつも私を支えてくれていた。とはいえ、いくらなんでも2日間で結婚までするというのは難しいなと思って。私の実家の青森と、遠藤さんの実家の北海道と、両方に挨拶して、婚姻届を出して……というのは現実的じゃなかったから、受精卵は諦めました」

【2018年10月5日(金)】
〈私は卵だけ取るの後悔しない。もしそれで再発して死ぬ事になっても死ぬ直前まで卵取った事は絶対に後悔しないと思う。もちろん成功率は低いから、ダメかも知れないけど、やれる事は全部やったって思えるのかそうじゃないのかは全然ちがうと思う〉

 告知からたったの2日間で、和さんは決意を固めた。

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン