芸能

自分で決めた大往生 橋田壽賀子さんが最後に書いた「理想の結末」

「大衆に受け入れられてこそ価値のある作品」がモットーだった

「大衆に受け入れられてこそ価値のある作品」がモットーだった

「私が死んでも悲しまなくてもいいのよ。千の風になってあなたの周りにいるから」──。生前、その豪邸の家主は、近しい人にそう語っていた。海抜400m地点にある自宅の前には紺碧の海が広がり、晴れた日には房総半島や伊豆大島まで一望できる。車や人の往来はほとんどなく、静けさのなかで聞こえてくるのは鳥の囀りばかりだ。そこは静岡県熱海市にある鉄筋3階建ての一戸建て。4月4日午前9時13分、その家でひっそりと息を引き取ったのは脚本家の橋田壽賀子さん(享年95)だ。

「亡くなる前日に熱海市内の病院から自宅に戻りました。死の床では長年、ドラマでタッグを組んだ泉ピン子さん(73才)がつきっきりで、目を閉じて横たわる橋田さんに『ママ! ママ!』と声をかけていました。その声を聞くと、橋田さんは別れの挨拶をするかのように目を開きましたが、徐々に反応がなくなっていったそうです」(TBS関係者)

 最期は“愛娘”に化粧を施されて、旅立った。その部屋には『千の風になって』が流れていた──。

 1925(大正14)年、京城(現在の韓国・ソウル)に生まれた橋田さんは戦後に松竹の脚本部を経て、1959年にフリーの脚本家になった。1983年のNHK連続テレビ小説『おしん』は最高視聴率62.9%を記録し、1990年に始まった『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)は国民的人気ドラマになった。橋田さんの描く、逆境に耐えて生き抜く芯の強いヒロインは、世の女性に大きな勇気をもたらした。

 昨年3月に志村けんさん(享年70)が亡くなってからはコロナ対策に慎重になり、外出を控えるようになった。

「今年に入り倦怠感や体重の減少がみられるようになり、2月に急性リンパ腫の治療で都内の病院に入院し、3月中旬に熱海市内の病院に転院しました。コロナ禍が始まると、同じく熱海に住むピン子さんにほとんど会えませんでしたが、入院してからはピン子さんが面倒をみていたそうです」(前出・TBS関係者)

 そして前述の通り、亡くなる前日に橋田さんは愛する自宅に戻ってきた。

「熱海の自宅で最期を迎えることは、橋田さんのたっての希望でした。橋田さんは、自宅での死をずっと望んでいたんです」(芸能関係者)

静岡の墓所で夫の時計と眠る

 晩年の橋田さんがこだわったのが「安楽死」だ。2017年に『安楽死で死なせて下さい』(文春新書)を書き、超高齢化社会に一石を投じた。当時の女性セブンのインタビュー(2017年11月30日・12月7日号)では、安楽死を望む理由をこう語っている。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン