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石原良純の東北酒蔵紀行 たくましく復興した名酒の今を追った

石原良純氏が東北の4つの酒蔵を訪問、それぞれの10年間と今を追う

石原良純氏が東北の4つの酒蔵を訪問、それぞれの10年間と今を追う

 米と水、冷涼な気候に恵まれた東北地方は日本でも有数の酒どころである。東日本大震災では多くの酒蔵が甚大な被害を受けたが、その後地道に復興し、今は再び酒好きを唸らせる美酒を造っている。今回は日本酒好きの石原良純氏が4つの酒蔵を訪問。「“酒屋万流”という言葉に倣えば“復興万流”。酒の数だけ復興の物語がある」と語る石原氏が、それぞれの10年間と今を追った。

佐々木酒造店(宮城・閖上)──あえて元の場所での再建を選んだ理由と覚悟

創業の地で復興(手前白と黒の建物)。目の前を名取川が流れ、右奥河口の先に太平洋が広がる

創業の地で復興(手前白と黒の建物)。目の前を名取川が流れ、河口の先に太平洋が広がる

「津波が来たら蔵の屋上に逃げろ」。幼い頃から祖母に言われ続けた言葉が浮かび、佐々木酒造店の5代目、佐々木洋さん(44)は蔵の屋上に上って命拾いしたが、蔵は設備も機材も流された。

 翌年、内陸部の復興工業団地に入居。酒というデリケートな生き物を産む環境にはほど遠く、専門家にも「無謀」と反対された。佐々木酒造店は「日本初の仮設蔵での酒造り」に挑戦しながら、辛抱強く閖上の復興を待った。被災を経験して「酒は町とともにある」「自分たちの銘柄『宝船 浪の音』は海の近くで造ってこそ」と痛感していたからだ。

 復興した創業の地に新蔵を建てられたのは一昨年秋。最新式の設備、機材を導入し、酒造業界の古い慣習を打ち破り、蔵人の常時雇用、週休二日制も導入している。「生きる力になれる酒を造りたい」と、若き経営者の言葉は力強い。(談/石原良純・以下同)

仮設蔵では閖上の新蔵で使うことを前提に設備、機材を設計し、実際それらを持ち帰った

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