寒梅酒造(宮城・大崎)──“素人”だった若夫婦が造る新たな酒と未来
4人姉妹の長女・岩崎真奈さん(36)が「戻ってきて」と親に泣かれ、婿養子となった健弥さん(36)とともに経営と酒造りの修業を始めた2007年、小さな酒蔵は億単位の借金があった。4年後、蔵は地震で倒壊。父と娘は「もう畳もう」と弱気になったが、婿は「やるしかない」と前を向いていた。
夏には新蔵の建設に着手し、冬には仕込みを開始。全てを任された若い夫妻は「失うものは何もない」と、一から味を見直し、ロゴもラベルも変え、取引先も「心の取引」をしてくれる相手だけに絞った。
10年が経ち、売上げは3倍に。一昨年夏には若い世代に日本酒を知ってもらい、地域の人の交流の場となる「蔵元バー」を開設した。「震災があったから自分たちは強くなれた」と夫妻は口を揃える。キャッチフレーズは「こころに春を呼ぶお酒」。2人は最大のピンチを最大のチャンスに変えた。