芸能

『おちょやん』が大団円へ きっちりと爪痕を残した役者9人の名前

浪花千栄子の生涯を知るテレビ関係者は、今後の展開にハラハラしているという(写真/共同通信社)

杉咲花は圧倒的な演技力を見せた(写真/共同通信社)

 開始当初は伸び悩む視聴率が話題になった朝ドラだったが、仕上がりがどうだったか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 いよいよ1週間を残すだけ。カウントダウンが始まったNHK朝ドラ『おちょやん』。放送された約半年間を振り返ってみれば……スタート当初は強気で大坂弁をまくしたてる主人公・千代(杉咲花)になかなか感情移入することができずに戸惑ったけれど、回を追うごとに独特なドラマ世界に引き込まれました。

 そして間違いなく来週、NHK朝ドラの中でも異色で、突出した出来映えの作品として幕を閉じることでしょう。その理由を挙げるとすれば--。

 まず、脚本担当・八津弘幸氏が逃げずに描いた苦みのある人生物語。それが大きな光を放っていました。父と継母に捨てられ一人で生きるしかなかった千代。ヤクザに拾われ人間不信になった弟・ヨシヲ。革命に憧れ日本を捨てた有名女優・百合子。満州で博打におぼれ音信不通となる寛治。不倫でバラバラになる一平・千代夫婦。芝居すら捨てる決意をする千代。人生の苦さが一杯詰まっていました。それが味わいに転化し、一人一人の役者を輝かせる活力となっていった。一言でいえば「大人のドラマ」として満足度の高い作品となりました。

 演出も実に凝っていました。

「芝居小屋」「ラジオ収録現場」といった非日常=演技空間と、日常との間行き来する、という演出がとてもユニーク。芝居の「中の世界」をこれほどたくさん見せた朝ドラは例を見ない。そのおかげもあってか、メリハリが生まれて半年という長い間でも途中でダレることなく、登場人物が鮮明に視聴者の中に刻まれていきました。

 そして役者たちの演技。振り返れば、えもいわれぬ深い余韻を残してくれた役者たちが、ズラリと勢揃いしました。

・トータス松本--演じた父・テルヲは鬼のように残酷で哀しい存在。ミュ-ジシャンが本業かと思っていたトータス氏の、振りキレた演技に脱帽。

・篠原涼子--「岡安」の女将はまさに千代の二番目の母として圧倒的な包容力を見せつけた。

・宮澤エマ--まだ32歳というのに意地悪な継母から人情深い老女・栗子まで、幅広い年齢を無理なく演じた力量に驚愕。

・星田英利--演じた須賀廼家千之助からは、大阪コテコテ喜劇の即興力や妙味、おばあさん役などの見所を教えてもらった。

・井川遙--看板女優・高城百合子の『人形の家』の力強さと千代の背中を押すパワー、ソ連への亡命という鮮烈な軌跡が忘れられない。

・若葉竜也--小暮真治の優男ぶりといったら、実にいい味を出していた。千代に惚れて振られ、百合子と亡命していく。芝居や映画への愛が全身からにじみ出ていた。

・倉悠貴--千代の弟・ヨシヲを演じ、物語に見事な転換点を作り出した。登場時間は短かったが視聴者に「ロス」を引き起こさせるインパクトで、哀しみを染みわたらせた。

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
来季米ツアー出場権を獲得した原英莉花(C)Yasuhiro JJ Tanabe
《未来の山下美夢有、竹田麗央を探せ》国内ツアーからQシリーズへの挑戦の動きも活発化、米ツアー本格参入で活躍が期待される「なでしこゴルファー」14人
週刊ポスト
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン
オリエンタルラジオの藤森慎吾
《オリラジ・藤森慎吾が結婚相手を披露》かつてはハイレグ姿でグラビアデビューの新妻、ふたりを結んだ「美ボディ」と「健康志向」
NEWSポストセブン
別居が報じられた長渕剛と志穂美悦子
《長渕剛が妻・志穂美悦子と別居報道》清水美砂、国生さゆり、冨永愛…親密報道された女性3人の“共通点”「長渕と離れた後、それぞれの分野で成功を収めている」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン