保守的なテレビ派は新番組を選ばない
2つ目の理由は、テレビを選ぶ視聴者の心理。「自分の意志で見たいコンテンツを選ぶ」というネット派の人々と比べると、「限られた選択肢の中から番組を選ぶ」というテレビ派の人々は保守的な思考回路と言われています。
テレビ派の人々は、「バラエティはふだん見ているものを選ぶ」「安心して楽しめるいつものバラエティがいい」と考える人が多数派。これは1クールごとに新作が放送されるドラマで「第1話が最も高視聴率だった」というケースが多いこととは対照的であり、バラエティはジワジワと上げていくしかないのです。
バラエティは人々の間に視聴習慣がつくまで長い目で見る姿勢が求められますが、それにしても数値として低すぎであり、ステイホームが求められている環境下を加味しても、「のんびり構えて浮上を待つ」というわけにはいかないでしょう。
実際、新番組のみが低迷しているのではなく、前後の番組にも悪影響を及ぼしはじめていますし、この状態が続くほど「ネットコンテンツを見る」ことが視聴習慣になる人が増えていくだけ。番組内の企画から演出、出演者、PRまで、さまざまな点でのテコ入れ策が実施されていくでしょう。
もはや視聴率獲得が絶対視される時代ではなくなりましたが、それでも「合格ライン」と言われる個人6%、世帯10%程度を取れなければ得られる広告収入の額が低くなるだけに、テレビマンたちにとっては早くも正念場が訪れているのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。