貧血対策として処方されることがある「鉄剤」も注意が必要だ。貧血の治療をしていた女性が、鉄剤とマルチビタミンを併用して鉄過剰症になったことがあると久保さんは言う。
「鉄欠乏性貧血で鉄を補うために処方薬をのんでいた人が、同時に自己判断でマルチビタミンのサプリをのんでいました。サプリに含まれていた鉄は、処方薬に比べるとかなり少ないのですが、2年ほどのみ続けていた結果、少しずつ体内に蓄積され、鉄過剰症になってしまいました」(久保さん)
鉄過剰症の症状は疲労や肝障害、関節の痛みなど。充分に気をつけたい。
コロナ禍で需要が高い「ビタミンD」のサプリも組み合わせに注意が必要だ。久保さんが続ける。
「ビタミンDのサプリと、スタチン製剤の一種であるアトルバスタチンは相性が悪い。スタチン製剤は、高コレステロール血症などの治療に使われる薬ですが、ビタミンDのサプリがその効果を下げてしまう可能性があります」
廣瀬さんは骨粗しょう症治療薬との併用を懸念する。
「骨粗しょう症治療薬は、カルシウムの吸収を促進させ、骨を守る薬です。サプリのビタミンDもカルシウムの吸収を促進するため、血液中のカルシウム濃度が上昇しすぎる可能性が。腎臓に負担がかかり、気分障害に陥るケースがあります。
そもそもビタミンDは水に溶けづらく排出しにくい脂溶性ビタミン。体内に蓄積しやすいので気をつけてほしい」(廣瀬さん)
骨粗しょう症の治療薬は、「カルシウム」のサプリとも相性が悪く、カルシウム血症を引き起こす可能性がある。併せて確認しておきたい。
胎児の発育を支える栄養素をふんだんに含み、妊娠初期に必要なサプリだといわれる葉酸にも気をつけたい。左巻さんが言う。
「てんかんの予防に使われる抗てんかん薬のフェニトインは、葉酸と組み合わせると悪影響が出て、薬が効きづらくなることがあります。てんかんは発作を起こすこともある病気ですが、葉酸が薬の含有成分を分解してしまう恐れがあるので注意が必要です」
購入前の裏面の表示をチェック
薬もサプリも健康を考えているからこそ摂っているのに、逆効果になってしまえば元も子もない。リスクを避けるうえで最も大事なのは、医師や薬剤師に情報を伝えることだ。久保さんが言う。
「主治医に自分がどんなサプリを摂っているかを伝えていない人は意外と多い。薬との併用で副作用が起きたとしても、医師が知らなければ対処できません。
のんでいるサプリは医師にきちんと伝えておくのはもちろん、自分で情報を管理しておくことも大事。サプリのリストをお薬手帳と一緒に保管しておくといいでしょう」
マルチビタミンのように複数の成分が入っているものは、知らないうちに過剰摂取していることもある。のんでいるサプリにどんな成分がどのくらい含まれているかをチェックしておくことが大事になる。