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1976年、田村亮さんの結婚式で集まった田村家。左から正和さん、亮さん、母・静子さん、高寛さん、俊磨さん

 そして『ニューヨーク恋物語』(1988年・フジテレビ系)や『古畑任三郎』(1994年~・同)シリーズなどもドラマ史に燦然と輝く“田村正和作品”ですよね。

 どんな長ぜりふも入っていて、NGを絶対に出さない。極楽とんぼの加藤浩次サン(52才)は自身のドラマデビュー作『オヤジぃ。』(2000年・TBS系)で田村さんと共演した際、「全部フォローしてくれた」と『スッキリ』(日本テレビ系)で明かしていました。いわく、リハと本番でせりふの順番が入れ替わっても、間の空け方が変わっても、田村さんは「好きにやっていいよ」と合わせてくれたそうです。

 クールで決して饒舌ではないけれど、記者やリポーター、アナウンサーらとの絡みでは必ず見出しになるようなことを言ってくれたそう。

黒柳徹子サンのクルマに追突されても、大ごとにせずスッと立ち去った

 また、「田村三兄弟」全員と共演経験がある『バイキングMORE』の坂上忍サン(53才)は、撮影が終わって街に繰り出した際、風俗店ならではの“おもしろ看板”を目にした田村さんが「ぼくも入学したいなぁ」とボソッとおっしゃったことが忘れられないと。看板の中身、だいたい想像できますよね。チャーミングなかただったのです。

 フジテレビでは、2007年、『とくダネ!』の小倉智昭サン(74才)がインタビューしたVTRも流されていました。『古畑任三郎』が一世を風靡していた2007年6月のオンエアで、小倉サンが手にしていたのは「噂の田村正和伝説」。

【1】NGは一切出さない
【2】セリフは相手役の分まで覚えている
【3】他人の前では食事する姿を一切見せない
【4】最近やっとセロリとキャベツの違いを覚えた
【5】実はテレビっ子でモノマネが得意

 一つひとつ、“めくり”で田村さんにあてていった小倉サンに対し、明確に否定なさったのはモノマネのくだりだけでした。

「食事する姿を一切見せない」という“伝説”は、私も何度も耳にしたことがありますが、前述の『スッキリ』で、田村さん行きつけの京都の料理店の女将さんでさえ、「箸をつけていらしたのを見たことがない」と言っておられたのには仰天しました。遅刻を絶対になさらないという話は『古畑』の第2シーズン初回、「しゃべりすぎた男」にゲスト出演した明石家さんまサン(65才)から聞いたことがあります。さんまサンは道に迷い、1時間半も遅刻した際、とっくの昔に到着していた田村さんから「ありがとう。待っている間、カレーを食べられた」と言われ、「救われた」と。訃報を受け、このエピソードを改めて『ヤングタウン土曜日』(MBSラジオ)で振り返っていました。

 おやさしい人柄のエピソードでは『徹子の部屋』(テレビ朝日系)で黒柳徹子サン(87才)が明かした“追突事件”には、もっとも驚かされました。徹子サンが田村さんのクルマに追突し、降りてきたのは明らかに田村さんだったのに、大ごとにせず、その場から立ち去ったのだそうです。田村さんも徹子サンだと気づいていたといいますが、金持ち喧嘩せず……ということなのでしょうか。さすがすぎます。

 チャーミングな面がたくさんおありになるうえ、ちっとも偉ぶらない。でも、ひとたびカメラが回り始めたら、演出家や脚本家が思い描いていた以上に演じきったといわれる田村さん。

 お墓の準備や生前贈与も済まされて、静かに旅立たれた田村正和さんは、最期まで「正和さま」でした。ご冥福をお祈り申し上げます。合掌。

構成/山田美保子

『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)などを手がける放送作家。コメンテーターとして『ドデスカ!』(メ~テレ)、『アップ!』(同)、『バイキングMORE』(フジテレビ系)、『サンデージャポン』(TBS系)に出演中。CM各賞の審査員も務める。

※女性セブン2021年6月10日号

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